旧知の仲
街に戻るなり、俺達は真っ先に冒険者ギルドを目指した。
やはり、最初に相談すべきはメルエラさんだろう。
「ゲルト! ギルドの明かりがついてるよ!」
「ありがたい!」
俺とライザは、ギルドの扉を勢いよく開ける。
「ん……? なんだ、君達か。そんなに慌ててどうした?」
奥の執務室から、メルエラさんが不思議そうな表情を浮かべて出てきた。
「メルエラさん! さっき森に、怪しい連中が!」
「怪しい連中?」
俺達は、森での出来事について詳しく説明した。
氷属性魔法の使い手と、【認識阻害】のスキルを使う覆面の男と戦闘になり、俺達と互角以上に渡り合ったことや、何故かバルザールさんの名前を口にしたことも含めて。
「ひょっとしたら、連中はバルザールさんを狙ってこの街にやって来ているかもしれません。あの人がやられるとは思えませんが、連中も実力は確かですから……」
「ふむ……」
メルエラさんは、顎に手を当てて思案する。
そして。
「なら、まずはカルラの宿屋に行ってみるとしよう」
「「カルラさんのところに!?」」
メルエラさんの言葉に、俺とライザは驚きの声を上げた。
ど、どうしてここで、カルラさんが出てくるんだ!?
「そ、それは、敵の目的はカルラさんだってことですか!?」
ライザが身を乗り出し、メルエラさんに問いかけた。
カルラさんは宿屋と一緒にずっと守ってきた食堂を譲ってくれた、俺達にとっていわば恩人だ。
そんなカルラさんが狙われているっていうなら、俺達は全力で守り抜かないと。
「フフ、まあ行ってみれば分かる」
「「は。はあ……」」
微笑みさえ見せる落ち着いた様子のメルエラさんに、俺もライザも拍子抜けしてしまう。
だが、メルエラさんは俺なんかよりも遥かに強く、カルラさんとも生まれた時からの付き合いなんだ。なら、俺達は彼女の判断に従うしかない。
首を傾げつつも、メルエラさんとともに宿屋へ帰ってくると。
「「っ!?」」
カルラさんとカウンター越しに談笑する、二人の男女。
一人は、赤いドレスを着た、プラチナブロンドのどこか人間離れしたかのような美しさと青白い肌の少女、もう一人は……俺が黒死の森で対峙した、覆面の男。
「っ!」
「まあ待て」
あの二人に詰め寄ろうとしたところでメルエラさんが俺を制止し、そのままゆっくりと三人へ歩み寄った。
「フフ……“ミラーカ”、それに“ライナー”、久しぶりだな」
……メルエラさんの落ち着いている様子やカルラさんがにこやかに話しているところからも、薄々はそうじゃないかと思っていたよ。
「あ、あはは……ゲルトの対応は何一つ間違っていないと思うよ」
「ライザ、ありがとう」
苦笑しながら慰めてくれたライザに、俺は素直にお礼を言った。
だけど、メルエラさんやカルラさんの知り合いということは、やはり英雄レンヤとゆかりのある人だったりするんだろうか。
「既に出会っていると思うが、紹介しよう。隣の食堂を経営している、ゲルトとラウザだ」
「……ゲルトです」
「ライザです」
ペコリ、とお辞儀をするライザに対し、俺は一瞬
何というか、まるで俺が独り相撲をしていたみたいで、少しバツが悪いのが正直なところだ。
「へえ……あの森にいた二人は、あなた達ね。確かに
「ふむ。バルザールさんと関わりがあるとは思ったが、やはりか」
え、ええと……何故か二人から、まじまじと見られているんだが。
「自己紹介が遅れたわね。私はミラーカよ」
「ライナーだ」
ええと……ミラーカ……さん? は年上? 年下?
背格好だけだと、間違いなく十二、三歳にくらいにしか見えないんだが、その口調やたたずまい、何よりメルエラさんと旧知の仲であることを考えると、俺達より年上なんだろうな……。
そして、ライナーさん。
覆面をしたままなので顔は分からないが、声色や目じりの
いずれにせよ、当然ながらこの二人も強い。
「フフ、聞いて驚くな。このゲルト君は、
「っ!? [英雄(偽)]ですって!?」
「…………………………」
ミラーカさんが驚きの声を上げ、ライナーさんが僅かに目を見開く。
まあ、この街ゆかりの人なら、この
「そう……レンヤと同じ系譜を持つ者が、三百年の時を経て現れたのね……」
「……ああ」
メルエラさんはともかく、ミラーカさんまでもがどこか懐かしそうに微笑んだ。
ま、まさか……。
「そ、その! ミラーカさんは、ひょっとして英雄レンヤとお知り合いなんですか……?」
ライザも俺と同じ考えに至ったようで、ミラーカさんにおずおずと尋ねる。
「ええ、そうよ。昔、あの
「「っ!?」」
そう言うと、ミラーカさんは小さな口から鋭い牙を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます