蒼い涙

能美音 煙管

プロローグ…

昔、昔…ある王国おうこくとある帝国ていこく戦争せんそうをしていました。

最初の切っ掛けというのはいつの時代も同じでどちらかのねたみから始まった物でした。その戦争は日を追うごとに激化し、日々人が死に、血を流し、そしてまた憎悪を生み出していました。

戦争は何も生み出さず、只々ただただ禍々まがまがしいしい憎悪ぞうおのみしか残りませんでした。

ある帝国はひらめきました。王国の王都おうと陥落かんらくさせれば全ては終わると考えました。

そして、王都は何者かによりいっぱいの人が倒れ、息絶えていきました。

それは人の生命力を大量に奪う禁忌魔法きんきまほうでした。その魔法はお互いの国では使ってはいけないはずの魔法でした。そのはずでした…。守るべき、王も、民も、最愛の人も全てを奪った魔法。


王国側は王都が陥落し、兵士たちもこれで戦争は終わったんだと、皆思っていました。

しかし、この行いに激怒げきどした一人の魔導士まどうしが兵士や魔導士たちの言葉も耳に入らず…

最愛の人の言葉すらも…。


帝国は天より罰が当たる事になりました。


王国最強と言われた魔導士が帝都上空より蒼い炎の玉を帝都に放ち、王国陣営から見た者はその蒼い炎を見てこう言いました。


【蒼い涙】が流れていると…。


そして、戦争が終わりました。お互いの被害が甚大じんだい過ぎて、2つの国としては成り立つ事が不可能になりました。互いの国は1つの国を作り現在の共和国きょうわこくが出来ました。

共和国には戦争を終わらせた英雄として、七賢者しちけんじゃが国の代表になりました。

しかし、七賢者の椅子は1つだけ空席がありました。

それは終戦後に居なくなった王国最強の魔導士がいつでも戻っていいようにと配慮された物だそうです。

人は学びました、時に論争は必要だが人を殺めてはいけないと。一番の被害は未来ある子供達の命を奪ってしまった事。

―――

本を朗読していた老婆に子供は尋ねます。

「おばあちゃんは あおいなみだを みたことあるの?」

老婆はしわくちゃの顔で悲しそうな顔で答えます。

「ばあちゃんはね、先の戦争時に魔導士として居たんじゃ。でもね、お師匠様は悲しくて、にくくて、何処にぶつけていいか分からない感情を蒼い涙としてぶつけてしまったんじゃ…。それはそれは悲しい出来事だったんじゃよ」

老婆は眼鏡を外し、窓から見える外を見ながら話しを続けた。

「戦争なんてね、やってもいけないし、人を殺めるなんて事もしちゃいけないんだ。その先に待っているのは…只々、絶望と憎悪しかないんじゃ…お師匠様は蒼い涙を放った後こう言ったのじゃ。―――――――――…」

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