第44話 復体

 今回は短めです。よろしくお願いいたします!! (`・ω・´)


 ――――――――





 東京千代田区東京駅南口。

 そのドーム状の建物中央で2人の少年少女が対面していた。


「こ、こないでくれ」


 少年は必死に懇願するが、少女は表情一つ変えない。冷たい氷の顔を浮かべたまま、カツン、カツン、と足音を鳴らして少年へ近づいていく。


 届いていないのか、少年の叫びを無視し、彼女は“無”を拾った。少女が手にした瞬間、“無”それは形を現す。


「や、やめてくれ! 死にたくないんだ!」

「………」


 少女が右手で掴んだそれは、少年の命といってもいい、黒のコア。まじまじと見つめる彼女は何も発さず、少年の主張にも答えない。瞳に心はなかった。


 そして、少女はコアを地面に捨て、冷淡に大杖の先端で破壊。


「あ、あぁ…………」


 目の前で自分の命が散り、絶望の声を漏らす少年。

 コアの破片を必死にかき集めるが、時すでに遅し。

 コアの破片は風に吹かれると、一瞬のうちに消えていった。


「ごめんなさい、許して…………」


 彼を殺さなければ、勝てない。生き残れない。

 全員生き残れる道はないのか、と笑顔を失った少女は涙を頬に伝わせ、もう一つの彼のコアを壊した。




 ★★★★★★★★




 コニーとベンジャミンを屠り、転送装置を使って移動した先は東京駅。


 久しぶりの東京駅は、人1人いない静かな場所となっていた。レンガは黒く、コンクリート部分は紫。


 魔王の城のようで、すくむような威圧感がある。レンガを縁取るネオンの紫で、禍々しさが一層増していた。


「うふふ、こういう東京駅もいいわね」

 

 珍しい駅の様子にテンションが上がり、ホームから飛び降り線路へ降り立つ。前世ではありえない行動を取っていた。


 第2ラウンドもそうだったが、第3ラウンドが開始されても、未だエイダンとハンナに出会えていない。人数も少なくなったし、転送装置があるから、エンカウントしやすくなったと思ったのだけど。


 あの子たちは一体どこで何をしているのかしら?

 やむを得ず戦ってる?

 もしくは、誰も殺したくないから逃げてる?


 ハンナとエイダンなら逃走なんて容易いだろう。多分誰も相手にならない。相手になれるとしたら、私とセイレーン、レイモンド(故)ぐらいでしょう。


 でも、セイレーンは戦闘する気はゼロだし、レイモンドはもう地獄に行った。


 残るのは私ぐらい………。

 でもなぁ…………。

 出会えないから、戦うことすらできてないのよね…………。


 エイダンたちを探すことはできる。不可能ではない。が、東京全区となると、かなり労力を必要とする。エイダンを相手にするのであれば、力は戦いに温存しておきたいところ。


 暗闇の中、導くように伸びる蛍光色に光るレール。そのうちの一本の青の線路へ飛び乗り、綱渡りのように歩いていく。すると、到着する電車のアナウンスが鳴った。


 しかし、電車は一向に現れない。ただ静かにアナウンスだけが響くだけだった。


 転送装置で着いたからには、東京駅に誰かはいると思ったのだけど………敵はもうすでに移動したのか、人の姿1つない。あの東京駅が無人状態だ。


 次の場所への移動を考え星型十二面体の転送装置を探していると、南口にのドーム状の建物に来ていた。


 この駅を象徴とするものの1つ――――ドーム天井の出口。本来はチョコ色とクリーム色の可愛いらしいデザインだったのだが………。


 今の東京はサイバーパンク。SF感満載のこの世界では、ドーム天井がエメラルドグリーンと黄色という、目がちかちかしてしまいそうなド派手なものと変化していた。かわいらしさはどこに消えたのやら。


 まぁ、これもこれでいいわね………。


 その天井の真下で突っ立ていたのは、少女と少年の2人。少女の近くに地面に伏せる少年がいたが、気づいた頃には彼の体は金の塵へとなって消えていた。


 だが、ただ少女は静止していた。

 少年の消失後も、彼がいた場所をずっと眺めていた。

 

「もう嫌だ…………こんなの嫌だ…………」


 微動だにしなかった彼女は、肩を震わせ、絞り出すような涙声でこぼしていた。背中を向けられていて顔は見えない。泣いているのかしら?


 …………もしかして、さっきの男の子は友人だったのかしら?


 この子からはいい絶望の声が聞けるかもしれない。

 そんな期待を膨らませながら、私は彼女に挨拶をした。


「ごきげんよう」


 一瞬ハッと息を飲んで肩を震わせた少女。だが、すぐに銀髪を揺らして振り向いてくれた。


「………………は?」

 

 彼女の顔を見た瞬間、フリーズ。動けなかった。


 プレイヤー全員の顔と名前を覚えている………完璧に覚えた。


 衣装も覚えているため、誰がどの服だったかも覚えている。先ほど塵になって消えた少年の名前もだ。名はオリバー・メントリーだった。


 でも、彼女の顔にも衣装にも見覚えがない。

 いや………顔には見覚えはあるか――――。


「ねぇ、あなたは誰………?」


 私の挨拶に、長い銀髪を揺らして振り向いた少女。

 涼し気な青い瞳に、肩よりも長い銀髪………ああ、見覚えがないはずがない。


 彼女の顔は、いつも鏡で出会うなのだから――――。




 ――――――


 明日は12時頃更新します。

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