第6話 メル友・・・その6

寝取られる・・・?

ま~ま~、ずいぶんと、ま~・・・。ってか、他人事に思えないんですけど。


「寝取られるって、あんた、何?もしかして、寝取られちゃったの?」


「ま~ね。簡単に言えば、そういうことになるかもね」


「で、誰に寝取られたの?」・・・あえて訊く、この意地悪なあたし!


「誰って、私が、親友だと思ってた彼女によ」


あい?あい?あい?

ま~、似たような経験をしてる子って、やっぱ、いるのね~。


「何?あんた、自分の親友に、その彼氏を寝取られちゃったの?」


「正直、最初は信じられなかったんだけどね」


「でも、まあ、男を寝取るような女だったってだけのことなんじゃない?」


「それが、違うのよ」


「違う?」


「そうなの、絶対に、そんなことをするような子じゃなかったのよ」


「んなの、分かんないわよ」


「それが分かるのよ」


「何でよ?」


「彼女ね、頭が良くて、大人しくて、優しくてって。文学少女そのものだったのよ」


「文学少女?」


「雰囲気がね。それに、本とか読むのも好きみたいだし。そんな感じの子」


「ふ~ん・・・人って分かんないもんね~」


「それに、彼女は、それまで誰とも付き合ったことなんてなかったのよ」


「あんれ、ま~・・・」


「それに、文通なんかを真面目にしてたような、メルヘンとか、童話とかの世界が似合う女の子なのよ」


「それじゃ寝取ったんじゃなくて、その男が、あんたからその子に乗り換えたってことなんじゃないの?」


「あっ・・・それは、言わないで・・・」


「はは~ん・・・。ただ単に、箱入り娘が、遊び人に捕まったってわけね」


「うっそ・・・?」


「何?」


「おんなじことをあの人も言ってたって、彼女から聞いたことがあったわ」


「おんなじこと?」


「そうなのよ」


「ふ~ん。んで、その親友って、なんて名前なの?」


「どうして?」


「だいたい名前で分かるのよ、その人の性格とかがね」


「うんとね、彼女の名前は雪子って言うのよ」


「なるほど。何となく、あんたが言ってる文学少女って意味が分かる気がするわ」


「でも、あの頃は名前で呼ばなかったんだけどね」


「何?あだ名とかで呼んでたの?」


「そうよ。ね~、当ててみてよ」


「んなもん、分かるわけないでしょうが?」


「大丈夫よ。さっきだって500円玉を当てたじゃない?」


今度は、あたしの方がちょっと考え込んでしまった。

なにせ、さっきの500円玉なんて、そんな滅多にあるようなことじゃないし。

というより、出会いが500円玉って当てるのってさ、ある意味、奇跡に等しいんじゃない?

それに、机の上にあった、な~んてことは、もちろん嘘だし・・・。

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