第2話これで終わりにするから

私は部屋に戻り、扉を閉め鍵をかけた。

「・・・っ!!」

我慢していた嗚咽が漏れる。

同じく我慢していた涙が頬をつたい、扉の前で蹲った。

「・・・な・・・ん・・・で・・・!・・・嫌・・・よ・・・!!」

奥底の本当の己の気持ちが爆発するように溢れ、身体中を支配する。

ずっと、我慢して、我慢して、我慢して!

本当は我慢なんてしたくない!!

本当なら、自分の気持ちに素直に生きれるはずだったのに!!

「・・・なんで・・・!・・・私が!!」

言葉に出してはいけない。

恨んではいけない。

貴族として生を受けた瞬間から、当主の言葉は勅命と等しく否定する事は許されない。

分かっている、分かっているわ、そんな事!!

でも、

でも!!

お姉様が、嫌だからといってこんな形で私にするなんて許されないわ!!

頭で理解していても、心は直ぐに理解してはくれない。潰される程に胸が苦しく、まるでじくじくと血を流しているかのように苛む。

溢れる涙と呼吸さえままならない中での嗚咽は余計に、辛辣な己の感情をより突きつけてくる。

最後だから・・・。

顔を覆う手の隙間から、幾つも幾つも涙が零れおち膝の上がしっとりと濡れていく感触が少しづつ、心の芯の奥を染めていく。

もうこんなに泣くのも、

「・・・うっ・・・」

嘆くのも、

あなたを想うのも、

「・・・っ・・・!」

これで終わりにするから。

そうしたら、

私は全てを受け入れる。

「・・・うっ・・・!」

アッシュ伯爵家の娘として、

グラスの為に、

相応しく生きていきます。


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