上京男子と地方局マニアの女子【伏字・ぼかし表現解禁版】

白石あみの

1年生編

第1話「出会いのゼミ室」

「では皆さん名前と…じゃあ出身地を言ってください。」

俺は斎藤良哉りょうや。東京のどこかの大学で歴史を勉強している、ごく普通の大学1年生だ。半年前に岐阜から上京して、大学の最寄りから電車30分弱、駅からは徒歩で10分もかからないところにあるマンションで一人暮らしをしている。


この大学は全ての学部で1年生の後期から早々とゼミが始まる。今日はそんなゼミの授業の記念すべき1回目。今回はゼミ生の自己紹介とゼミの説明だ。

「じゃあ次は斎藤君。お願いします。」


俺の番が回ってきた。教授に促され自己紹介をする。

「斎藤良哉です。岐阜県から来ました。大学では織田信長について研究したいと思っています。信長は岐阜にゆかりの深い武将であることや、同じく岐阜を代表する武将で私と同じ名字でもある斎藤道三とも同盟関係にあったので親しみを感じています。よろしくお願いいたします。」

自己紹介を終えて他のゼミ生と教授が拍手をする中、一人の女子と目が合ったのに気がついた。


あと全員の自己紹介を終えて分かったことだが、どうやらこのゼミで地方から上京してきたのは俺だけのようだ。


それから90分ほどが経ってゼミの授業が終わる。配られた資料を入れたクリアファイルをバッグに入れてゼミ室を出ようとしているところに、一人の女子が俺の席にやってきて俺に話しかけてきた。


「斎藤君。」

彼女の名は黒藤くろふじ紘深ひろみ。自己紹介のあと俺と目が合ったやつだ。しかし彼女の研究したいものは江戸時代のお祭りであると自己紹介で言っていた。実は彼女も信長が好きなのか?

「うん。」

「ちょっと聞いていい?」

「ああなに?黒藤さんも信長が好きなの?」

「そうじゃなくて…」

この後彼女の口から飛びだした言葉は、俺の予想を遥かに超えたことだった。

「岐阜にいた頃、『テレビが通販ばっかりだな』って感じたことはある?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る