SAVE.101C:婚約破棄とセーブ&ロード①

 ――さぁ、茶番の幕開けだ。


 何度も何度も繰り返した、物語の始まりを。




「残念だよ、シャロン=アズールライト……まさか君が、このような事を」


 吹き抜けのある大聖堂、ため息混じりに首を振る王子、彼に寄りかかる涙目の主人公。


「今ここに宣言しよう。私、ルーク=フォン=ハウンゼンは」


 そして下唇を噛み締めながら、じっと耐える悪役令嬢。


「『蒼の聖女』、シャロン=アズールライトとの婚約を……破棄する!」


 そして彼は――悪役令嬢の義理の弟、アキト=アズールライトは――。




 落下していた。




 それは偶然の事故だった。たまたま彼の側にあった手すりが壊れていただけの話。


 けれど、原因がどれだけ間抜けで些細な物だとしても……結果は最悪の物だった。


 


 そして彼は呆気なくその命を落とした。血の海に浮かび、動かなくなったアキト。それを見た私は、人目も憚らず金切り声を上げる。




 ――だって、こんなの、耐えられないから。




 やり直すんだ、何度だって。


 救わなければ、彼の命を。


 例えこの物語を、どれだけ歪に変えてしまっても。




『ロードしますか?』



 それが私に出来る、たった一つの償いなのだから。






▶SAVE.101-1:婚約破棄とセーブ&ロード

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