SAVE.104C:君との出会いを、君との日々を④
「じゃあアキト、始めようか」
「ああ、いつでも」
空からこぼれ落ちた月明かりに照らされた彼の頬に、ゆっくりと手を伸ばす。そして私は……触れるような小さなキスをした。
ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
心の中で何度も謝罪の言葉を繰り返す。
君に触れた私を許せないから。君を好きな私を許せないから。抑えられない自分の感情を許せないから。
「僕の……私の勝ち、だね」
私の瞳から流れる涙を、彼に拭ってもらう権利なんてない。
「私が勝ったんだ、お願いを聞いて貰っていいかな」
「あ、ああ……」
私は最低だ、最悪の女だ。どれだけ世界を繰り返しても、君への想いを断ち切れないから。
「今のキスは……忘れて欲しいんだ」
未練がましいその台詞に、心底自分を嫌いになる。
「私が君にこうした事を、一緒に夜空を見上げた事を、他愛のない毎日を笑って過ごしていた事を」
だって、君は優しいから。
「出来るわけ無いだろ」
ほら、首を横に振った。
「駄目だよ。約束……だからね」
本当は忘れてなんか欲しくない、いつまでも覚えて欲しい。
世界が終わるその日まで、世界が変わるその瞬間まで。
君と過ごした、夢のように儚い日々を。
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