SAVE.105-1C:乙女ゲーム世界のセーブ&ロード④
「悪役になんか……なりたくなかったの」
シャロン=アズールライトが泣きながらそう答える。それを見て私は思う。
――ああ、ようやく終わるんだ。悲劇と喜劇に満ち溢れた、今回の物語が。
「勝手なことを……!」
「悪いなミリア」
狼狽しながら身を乗り出すミリアを彼が抑えつける。
「だけど」
彼の瞳にもう迷いの色は無い。
「俺は……勝手なんだ」
彼が生きて、笑っている。それだけ私の役目はもう終わっているのだろう。
「あなたなんて、脇役のくせに……!」
ミリアは彼を睨みながら、随分と的外れな事を言い出す。
脇役、彼が? 冗談じゃない。
「本当、なんでだろうな」
その疑問に答えられるのは、きっと私だけなのだろう。だけど答えない、答えられない。その資格が私にはないから。
「けど、いいだろう別に? 自分で自分を決めたってさ」
その言葉に私の心が苛まれる。彼の表情が、言葉が、仕草が世界を肯定するから。
とうの昔に世界を否定した私が背負った、消せない罪を責められているみたいで。
「俺の人生の主役は……俺しかいないんだからさ」
違う。違う違う違う。君は、君こそが世界の主役だったのに。
私が奪った、私が歪めた。
何度世界を繰り返しても、それだけは変わらなかった。
――変えられなかったんだ。
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