第12話・ダダ・ナーガ
人の姿になった
「お前たち何なんだよ……軽率に形が変わるし、なにより知ってることが多すぎる」
アダムは言った。
「決まった形とか特にないんだ。交流する相手に合わせてるだけ」
と
そう、神に特段決まった姿はない。しっかり観察ができれば、その姿に変わることができる。地上生物出身でなければ……。
「それより、ウカのお父さんなんだよね!? ねぇねぇ、ウカはどうしてこんなに賢いの? あなたも、同じくらい賢いの?」
エヴァは新たな生物との邂逅にワクワクとしていて、思わず
「まぁ、えっと……どえらい長い時間を生きてるんだ! そうだな、お前の母の母さんの……って言っていくと夜までかかるぞ!」
というわけで、神はとにかく経験則の怪物なのである。
「すっごい長生きなんだ!?」
エヴァはウキウキしていた。
そもそもエヴァというのは、様々生き物から食物の知識を吸収してきた存在だ。目の前に、その知識の塊のようなものが転がっていてはどうにも黙っていられない。
「なぁ、俺からも質問だ! ナァってのは、どうやって決めるんだ!?」
「えっとね、どういう人かって言うのでつけたよ! 私たちは!」
「私は、食べ物ってうまく言えなくて、それで付けられちまったじゃないか!」
エヴァの説明に
ここまでの慣例として、神は人に人は神に名付けを行っている。これが現代まで残り、神は人の祈りによってその姿を変えるという思想が存在するのである。
「よし、俺にもつけてくれ! いいだろ? 減るもんじゃなさそうだ!」
そう、減らない。なにせ、言うだけである。
「もちろんいいよ! でも、先にあなたのことを聞かせて!」
エヴァはもう少し情報を集めてから名前を付けようと思ったのだ。
「エヴァ……お前よく怖くないな……」
とアダムは呟いた。元の巨大な蛇の姿でとぐろを巻かれてすっかりトラウマだ。
そんなアダムを、エヴァは少しだけジト目でみた。
「さっきまでのでっけぇ姿。俺が面倒見てる奴らの姿だ! それと、お前たちに似た姿をしてるやつも面倒見てる!」
と、胸を張って
「えっとな……。面倒見てる、お前たちに似たやつ。共食いするんだ……」
と、
そう、ホモ・ネアンデルタールはカニバリズムを行うのだ。
「うわぁ……そんなの名前に入れたくないなぁ。ねぇ、大きな姿の子は?」
よってエヴァはそちらに、由来を求めることとした。そう、蛇の姿に。
「あぁ、あいつら俺に食べ物をめっちゃ貢ぐんだ。で、小さいままでいたら心配されたから大きくなっていった。続けてたらこんな姿ってわけだ! こいつらがさ、またバカなんだよ。何でもかんでも丸呑みするから、すぐ喉に詰まらせる」
飲むとは、原始シュメール語でナールと発音する。
「じゃあ、こう言うのでどう? スサ・ナールガル! 大きな飲み込むスサ!」
そして、蛇のことはスサナールと呼ばれるようになった。スースーだのサーサーだのと言う、飲み込む種と言う意味だ。バーバリアンなどと同じノリである。
「全く濁さないのかい?」
と、慣例を思い出させる宇迦之御魂。
「あ! じゃあ、スサ・ナーガ!」
大蛇がナーガと呼ばれる由来はここにある。エヴァによる名付けだったのだ。
「ありがとよ! じゃあ、これから俺はスサ・ナーガだ!」
こうして、二人目の名を持つ神が生まれた。
「しかしねぇ……。そっか、共食いか……」
「あぁ、あいつらマジで怖い……。豊かさの象徴として、食うんだよ……」
ホモ族は全て家畜に向いていない。人間では消化できないものを消化できる能力こそ家畜には求められるのだ。よって、草食獣が主体である。
ところが、霊長目は全て雑食かつ、食べられるものが限られている。その上、霊長目の食べられるものは共通の物が圧倒的に多い。よって、飼育コストがとてつもなく高く、コストパフォーマンスは最悪そのもの。
この時のネアンデルタールには既にあったのだ。無駄にするほどの余った資源が。それは、サピエンスよりも脳が大きかったから、とてつもない生産方法を編み出していたのである。よって富の象徴として食用の人間を飼っていた。
その話を聞いて、アダムの顔には恐怖が、そしてエヴァの顔には嫌悪感がにじみ出た。
「だからウカ! 代わってくれよ! 俺、あいつら怖いんだ!」
と、
「ていっても、スサの父が決めたことじゃないか……」
それは後の
「俺、父さん嫌いだ! だって、殺された兄がいるらしいもん!」
これが荒ぶる神の正体である。自らの兄を殺した
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