第25話 ハイジのそれから

ハイジは吟遊詩人と知らない世界に旅に出た。


海なんてものがあるなんて。

沢山のお水。

塩辛い。

どこまで続いているの?


海のところに大きな船、小さな船。

港って言うんだって。


そこには猫がいっぱい。

好き勝手に暮らしてる。

ご飯は漁師さんが魚をさばきながら、

ぽい、ぽいってくれる。



ボーボーと汽笛が鳴る。


ハイジは沢山の猫と一緒に夕焼けを見る。

そこへ、吟遊詩人は仕事を終えて戻ってきた。


「きれいだろ?ここの夕陽は僕が一番好きなんだよね。アルムの山の夕焼けも燃えあがるようでいいよね。」


「うん。すてき、すてきーー!

吟遊詩人さん、ありがとう。

私の知らない世界がいっぱいあるのね。」


吟遊詩人は猫を頭や背中や膝にわんさかと

載せながら、澄んだ瞳がキラキラと輝くのを

見ていた。


「やれやれ、ハイジは子供のまんまだ。

これじゃあ、恋人同士にはなれないなぁ。」

とため息をついた。


「ねぇ、私、アルムに帰るわ、明日。

ヨーゼフJr.も心配だし。

たっくさん、いろんな所を見せてくれてありがとう。

もう、いいの。アルムに帰りたいの。」


吟遊詩人は、ハイジを帰したくなかった。

けれど、旅を楽しむ癖が身に染み付いているし

あちこちに馴染みの女性もいる。


吟遊詩人は煮え切らないまま、ハイジを駅で見送った。

「さよなら、ハイジ。僕は自分の生き方を変えられないんだ。」


走りさった汽車に呟いた。




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