余命3ヶ月の私は恋をした。

海月.(くらげ.)

第1話 出会い

「瑠奈!!瑠奈!!泣」


(ピピピピ、ピピピピ、)


「あぁ、もう朝か」


まただ、知らない男性が私の名前を呼びながら泣いている夢。何回も見たこの夢。

少し悲しくて、モヤモヤする。


私は平凡に生きて、「この世界なんかに生まれなきゃ良かったー」なんて思わない死に方をする。


別に幸せなんて求めてない。私なんかには必要のないものだから。


最近私の体は変だ、目眩がしてよく頭痛と腹痛がある。

きっと仕事のしすぎてストレスが溜まっているのだろう。。

そう思った瞬間だった


「保科さん!?保科さん!!」

上司の斉藤さんの声、何をそんなに慌てているの?

「早く救急車!早く!保科さん聞こえてる?私の声わかるー」

だんだん聞こえなくなる斉藤さんの声。

私、どうしちゃったんだろう。


目を開けると、真っ白な天井。白い明かり。

「ここどこ?」

誰かが来る音がする。


「目が覚めましたか?保科さん。」

看護師さん?あぁ、私は倒れたのか。


「はい。」

頭が追いつかない。


「動けますか?一緒に診察室に行きましょう。」

看護師さんについて行くことしか出来ない。

倒れるのは初めてだし、私がどうして倒れたのかも分からないから。


診察室に入り、私は静かに医者の話を聴き始めた。


「結論から言うと、保科さんは肺がんです。」

医者は言う。

「肺がん?どうして私が、?」

突然の事で、理解ができない私は慌て気味で質問した。

「遺伝によるものでしょう。ご両親、または祖父や祖母が肺がんだった可能性が高いです。」

医者は淡々と話を進める。

「両親は小さい頃から居ないので分からないです。祖母と祖父は、数年前に他界しました。」

私は、家族のこと生活習慣全てを医者に話した。


「それで、大変申し上げにくいのですが、、」

医者は険しい顔で言う。

「はい。なんですか?」

この時、覚悟はしていた。だから、怖くないと思った。

「癌の方が、すでに末期で─ 余命3ヶ月です。」

少しづつ浮き出てくる実感。私はあと3ヶ月で死ぬんだ。

「わかりました。」

後悔しないはずだった。なのに今更出てくる今までの人生、私は自然と涙が出てきた。

残り少しの人生で何ができるのだろうか、

残り少しの人生で幸せになれるのだろうか、

今更幸せを求めたって、幸せになれるわけが無い。だけど、私はこの人生に後悔しかなかった。


死ぬまで、入院。病院の監獄に閉じ込められた私は誰にも知られず、愛されず静かに死んでいくんだ─


(ドン!)


頭が真っ白になりながら歩いていると、誰かとぶつかった感触がした。


「あ、すみません!!」


優しい男性の声だ。包み込まれるような、、


我に帰った瞬間、涙が溢れた。涙が滲んで男性の顔が見えない。


「だ、大丈夫です。」


私は走って病室まで戻った。


「あ、待って!」


振り返りたかった。だけど、振り返ったところで何になる。心配されて、慰められて、そんなの私が期待するだけだ。

それで虚しくなるぐらいなら、1人で死のう。

誰にも知られず、愛されず、静かにこの世界から居なくなろう─


【続く】

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