ある日スライムを拾った。

白鷺雨月

第1話1日目

このアパートにいられるのは残り一週間。

僕はとある工場に勤める工員であった。だが、その工場もおりからの不況によりあっけなくつぶれ、当然僕は仕事を失い、無職になった。いろいろと再就職先を探すがまったくうまくいかない。アパートの入居期限だけがじわじわと近づく。

会社の寮であるこのアパートにいられるのもあと七日間なのである。


残りの一週間のうちに次の仕事なんかをみつけなくてはいけない。だけど面接はことごとく落ち、机の上にはお祈りの封筒がたまっていく。そんなに祈られるのなら聖職者になれるかな。


アパートにいても仕方ないので、僕は近くの公園にでかけた。

けっこう大きな公園でテニスコートやプールも併設されている。プールは冬なので今は閉鎖されている。

僕はベンチに座り、ぼんやりと空を眺める。空はどこまでも青く、人間なんてちっぽけな存在だと思わせた。きれいな空を見上げて少しだけ気持ちがはれたけど、現状はなにもかわらない。


なんとなく公園の景色を見ていたら、僕は違和感を覚えた。

水飲み機のあたりになにかぶにょぶにょしたものが見える。透明でやわらかな何かが水飲み機の水が出る丸いところにまとわりついている。

僕はそれに恐る恐るさわってみる。

冷たくてぷにぷにしていて気持ちいい。少しくすぐったい。


僕は鞄の中にいれていたスポーツドリンクをすべて飲み干し、ペットボトルを空にする。ペットボトルの飲み口をその透明な粘液に近づける。その粘液はするするとペットボトルに入っていく。

ペットボトルの約半分がその透明な粘液でみたされる。


僕はそのプルプルとかすかに動くその透明な粘液をアパートに持ち帰った。


二日目の朝にそのペットボトルを見ると透明な粘液は満タンになっていた。単純計算でその透明な粘液の体積は倍になったようだ。

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