首なし姉妹の奮闘〜魔女の修行の次は、花嫁修行ですか⁉︎〜
南雲 皋
第1話 はじまり
魔女の正装、
いくつもの魔法陣が複雑に絡み合った
「
「
二人の声が、独特の響きを持って洞窟内に広がります。同時にローブから一際大きな魔力が立ち上り、重たいはずのそれがふわりと浮きました。
「ネビュウ・ファリエ」
「シスビー・ファリエ」
己の名を告げた二人の肩に、ローブが舞い降ります。袖に腕を通せば、それは血肉であるかのように二人の身に
「これでお前たちも一人前の魔女だな」
パチパチと拍手をしながら、七色に輝く長い髪の女性が二人に近付きます。星空のように細かな光がキラキラと
(やりました! やりました、ロフォーア様!)
(二人一緒に一人前になれるなんて、幸せだわ!)
二人のローブは喜びに
「あぁ、そうだな。
(教えておきたいこと?)
(まだ何かあるんですか?)
「お前たちの頭のことさ」
(頭!)
(頭!)
二人は同時にロフォーアから離れ、自分の頭があるべき場所に手を
大事な頭はとある事故によって永遠に失われたはずでした。その頭についての話とは一体なんでしょう。二人はロフォーアの前で
「魔女の
(えぇ。魔女が、自分の唯一と思い定めた相手に己を
「そうだ。死を
(完全なもの……)
(だから、頭も……)
「まぁ、首がない状態で魔女の婚姻を成功させたヤツなんて、未だかつていないからな。絶対とは言えないが、完全という言葉が明確に用いられる儀式も珍しい。期待はしてもいいと思うぞ」
(わたしやるわ! それに、お
(落ち着いてお姉さま、わたし、大変なことに気付いたの)
(なぁに?)
(結婚って、お相手が必要なのよ!)
(まぁぁ! 本当だわ! どうしましょう、わたしたちと結婚してくれる人なんているかしら?)
二人は向き合って、お互いの両手を合わせます。ネビュウとシスビー、この姉妹、魔女としての才能にはとても恵まれていました。
本来であれば物心付いた頃から魔女に弟子入りしていなくては難しいところを、十歳を越えてから弟子入りして一人前になれたのです。
しかし、花嫁としての才能はどうでしょう。
けれど一つだけ、二人から完全に欠けているものがありました。
料理です。
魔女の魔法は
(首なしになってから、ご飯なんて食べていないもの!)
(料理なんてしたことないわ、どうしましょう!)
二人はロフォーアの方を見ました。しかしロフォーアは、ゆっくりと首を横に振ります。
「お前たちが一人前になったら、私は旅行に行くって決めてたんだ。短くても半年は戻らないぞ」
(そんな!)
(花嫁修行は⁉︎)
「知らん。勝手にやれ」
(ひどいわ!)
(ひとでなし!)
「魔女だからな。まぁ、私の家にある
(うう……)
(一体どうすれば……)
「せっかくだ、街に出て教えてくれる人を探してみたらどうだ。お前たちはもう少し、魔女以外と
ロフォーアからの言葉に二人の合わせた両手が
確かにロフォーアの言う通りです。花嫁修行もさることながら、今のままでは結婚したいと思える相手と出逢うことすらできません。
(そうね、頑張らなくちゃいけないわよね)
(一人じゃないもの、大丈夫よ)
(えぇ、二人ならきっと大丈夫ね)
こうして、二人の魔女の花嫁修行が始まります。
彼女たちは無事に魔女の婚姻を成功させ、完全な肉体を取り戻すことができるのでしょうか?
一緒に、見守っていきましょうね。
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