ベルちゃんへ

どりゅう

お手紙

ベルちゃんへ


 大好きなベルちゃん。虹の橋は無事に渡れましたか。

 一緒にしておいたちゅーるとモンプチはもう食べたのかな。本当はあの日、持っていって食べさせてあげるつもりだったんだけど、こうしてお土産になってしまったのはちょっと心外です。

 私の方は、まだまだ悲しくて寂しいけど、ようやく切り替えができそう。とはいえきっとまだたまに泣いてしまうんだと思う。チビとチャコのことはまたちょくちょく見に行くね。


 12年前、まだ高校生だった頃に初めて会ったよね。真っ白でふわふわで200グラムの赤ちゃんだったんだよ。青い目がとっても綺麗で、とにかく片手に乗っちゃうくらい小さくて可愛かったのを覚えているよ。

 お腹空いてたんだよね。それなのに自転車のカゴから飛び出そうとするから結構焦ったな。動物病院でのご飯の食べっぷりには私もお医者さんも笑わせてもらったよ。

 来てくれた日、ダンボールのベッドで隣で寝ていたけど寂しかったのかな。夜中に鳴いたりうんちしたりで、不慣れな私には大変だったんだ。

 小さい頃からおっとりしてて、食べるのと寝るのが大好きなベルちゃん。気がついたら真っ白だったのに茶色いふわふわの貫禄の塊みたいになってたよね。美猫なのにあの貫禄は面白くて、友達ともよく話題にしてたんだよ。

 ラブを覚えてるかな。ベルちゃんが3歳くらいの時に死んじゃったブルテリアのワンちゃん。ちょっと大きくて怖かった? ラブも遠慮のない子だったから。でもね、時々一緒に寝てて可愛くて癒されたよ。

 あの頃は私も看護学生で真夜中にずっと起きてて記録を書いてたんだけど、ベルちゃんが同じ部屋に来て、ただそこにいてくれたのがどれだけ救われたか。ベルちゃんの存在だけで何度も心が安らいでいたよ。だから頑張れたのは、ベルちゃんのおかげでもあるんだよ。

 ベルちゃんとの思い出は数えきれないけど、ほとんどが寝てるかご飯ねだるか食べてるかのどれかばかり思い出すの。自分の可愛さ理解してた? ついついご飯もおやつもあげちゃうんだよね。だからと言って3回も朝ご飯食べてたのはびっくりしたんだ笑。おねだり上手すぎ!

 もたれるのが好きで、私の鞄にいつももたれてお顔が半分潰れてたね。なんだかすぐもたれちゃう私とよく似てるなと思ってたんだ。

 6時間くらい同じ場所でゴロゴロ寝てるくらいには動かないベルちゃんでも、レシートにはちょっと反応してたね。くちゃくちゃに丸めただけで追いかけてたのがすごく可愛かったよ。


 私は、ベルちゃんが11歳の頃に家を出てしまって、一緒には暮らせなくなったけど寂しくなかった?

 ベルちゃんは家族のみんなに愛されてたから、きっと大丈夫と思ったんだ。家族みんなの大事なベルちゃんだけど、私が連れてきた子だからやっぱり特別なんだよ。

 一緒に眠ったり、おやつを食べてくれたり、嫌だったろうけどお風呂に入ったり、ただ同じ部屋で過ごしたり、猫吸いしたり、もふもふしたり、それで怒らせちゃったり……ベルちゃんとの思い出はお家の中に数えきれないほどあるんだよ。

 12年と8ヶ月。長かったね。本音を言うとまだこっちにいて欲しかった。もっと一緒に寝たかった。おやつももっとあげたかった。写真も撮りたかった。一緒に遊びたかった。同じことの繰り返しみたいな生活だろうけど、まだそれが終わるのはもっと先だと思ってたし、そうであって欲しかった。楽しい時も辛い時も、どんな時でも変わらないベルちゃんがいてくれて本当に良かったと思う。

 でも、お別れなんだね。もっとしてあげればって後悔は残るけど、ベルちゃんを迎えたことも、過ごした日々も、家を出たことも、そういうのは何も後悔してないよ。ベルちゃんが幸せだったか、それは私には決められないけど、ゴロゴロって甘えてくれたのも、へそ天して寝てたのも、ご飯をねだりに来たのも、それら全部が答えだと思ってる。お家でのんびり過ごせて良かったよって、きっとそう思ってくれてるよね。


 思い出は書ききれないし、あまり言うとベルちゃんはしつこいの嫌いだからそろそろやめておくね。

 最後になるけど、うちの子になってくれてありがとう。チビとチャコを受け入れてくれてありがとう。たくさんの笑顔と癒しをありがとう。最期、私が来るのを待っててくれてありがとう。

 ベルちゃんのおかげで私の12年は温かくて幸せでした。


 どうか、大好きだった陽だまりの中で安らかに眠ってね。私もきっと元気に過ごして幸せを堪能したらまた会いに行くからね。


 それじゃあ、ベルちゃん、おやすみなさい。

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