第9話 初のボス戦

目の前にある大きな扉を開き、中に進むと大きな広間のようなところに出た。


「ダンジョンにこんなところがあるのか……」


「いかにもボス部屋って感じだね」


「ちょっとワクワクしてきたぜ」


「っ!?みんな!くるぞ!」


 龍蔵の声とほぼ同時に現れたのはオーク3体とゴブリンが30体ほど。


「スライムと訳が違うってのに……ゴブリンがあの数は結構めんどくさいな」


「僕は右の方のゴブリン達をやるよ」


「望?1人でいけるのか?」


「僕も成長しなきゃいけないからね……」


「望、お前の気持ちは分かったよ、だから龍蔵と2人で左右のゴブリン達をお願いできるか」


「春馬、俺のデータによればこいつらなど造作もないぞ」


「いいね、そういう返事を待ってたんだ」


「春馬、俺たちはオークを片付けようぜ?」


「あぁ、行こう和哉、こんなところで終わったらいつまでもIVStarsにはたどり着けないからな」


 俺のその言葉から、全員が弾き出されたように動き出した。

 望と龍蔵はオークの周りを囲っているゴブリンを相手にしている。身体強化を全力でかけているから問題は無いだろう。

 問題の相手のオークだが……こいつらは少しだけ面倒な相手だ。理由は特性かっ「あついしぼう」……じゃなくて、脂肪のせいでなかなか刃が通らない、魔法を使って倒すのがセオリーらしいんだが、俺達4人は魔法はまだイマイチ上手く使えていない。


「春馬、どうする?」


「とりあえず切ってみるしかない」


「ま、そうだよな!」


 オークは動きは遅いので、身体強化をかけてしまえば追いつかれることはほとんどない。


「まずは先手を貰うぞ――ッハァ!」


 ブモォォォ!


「意外と効いて……るのか?」


 オークは鳴き声を上げながらこちらに近づいてくる、1匹は和哉の方に、もう一方が俺の方に来た。何故か1匹動いてない奴がいるが、今そんなことは関係ない、まずは目の前の敵を屠るだけだ。


「どんどん行くぞ!」


 俺はオークの攻撃をバックステップで避けると、攻撃の隙をつき、思い切り前に出て武器を持っている方の腕を切り落とした。これで武器は封じた、あとは首を狙うのみ。


「待っていてくれ、IVStars。」


 武器を失ったオークはもう片方の腕で殴ることしか出来ず、簡単な動きになったので、それをあっさり避けてから全力で首めがけて剣を振るった。オークの脂肪もさすがに腕や腹より、首の方が脆いようで、さっきまでの刃の通りづらさが嘘みたいにスパッと切れた。


「ふぅ、まだまだ行ける」


 目の前の倒れたオークの魔石を拾い、他のみんな見て、声をかける。


「最後に強そうなやつが残ったみたいだ」


 先程の戦いでは全くと言っていいほど動かず、こいつ以外の全てが殲滅されてからようやく動き出そうとしている。


「なんだコイツは?いいご身分だぜ」


 ブモォォォォォォォォ!


 先程のオークとは比べ物にならないほどの圧を放ってきた。


「みんな気をつけてくれ!こいつ普通じゃない!」


「どうやら、そのようだな」


「これってもしかして、イレギュラーってやつかな」


 イレギュラーとは、本来の階層ではありえないはずの強さを持った個体が生まれてしまうことのことを言う。他にも色々イレギュラーに入る事象はあるが、今回のような例が最も多いイレギュラーとして、駆け出し探索者には恐れられている。


「しかも、ボスの部屋のイレギュラーだ。絶対に気を抜かずに行くぞ」


「ああ、まずは息を合わせていこうぜ!」


 和哉の言葉に合わせて、4人同時に走り出し、4方向からの斬撃がオークを襲う。


 ブモォォォォォォ!


 あまり大きなダメージは入らなかったが、ダメージを与えられたことに怒ったのか叫びながら攻撃態勢を取った。


「みんな、くるぞ!」


 俺が警戒の言葉を発したその直後、和哉が吹っ飛ばされた。


「「「和哉」」くん!」


「みんな、こいつは普通のオークなんかと比べ物にならないくらい早いし攻撃も重い、何とか防いだけど、勢いまでは殺せなかった、気をつけてくれ」


「分かった、助かる」


 和哉は普通に起き上がり、何事も無かったかのように今の一撃から目の前のオークに対しての感想を述べた。


「次もタイミングを合わせて行こう、狙いは首だ」


 もう一度タイミングを合わせて攻撃を仕掛ける、が次のオークの動きは予想外のものだった。

 俺、和哉、龍蔵の攻撃を首で受け止め、ものともせずに持っている棍棒で望に向かって殴りかかった。

 望は身体強化で上がっていた反射神経のおかげでなんとか直撃は防いだが、壁に向かって一直線に吹っ飛ばされ……無かった。


「望、お前……なんか浮いてるけど」


「そっか、風魔法ってこうやって使うんだ」


「望?何を言っているんだ?」


「ちょっと、こいつ僕に任せてくれない?」


「春馬と龍蔵がいいって言うなら俺もいいけど……いいのか?」


「まあ、望は変なところで強情だし、こいつが自分で自信を持ってる時は失敗しないからな」


「俺のデータも、同じような意見だ」


「じゃあ、僕やっちゃうね」


 そう言って、望は浮いたまま超スピードでオークに肉薄し両腕を瞬時に切り落とした。


「「「は?」」」


「みんな、これが魔法の凄さだよ!」


――――

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あとがき

覚醒のシーン雑過ぎない???

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