第2話

 お待たせしました。


と、巻き髪のポニーテールを揺らせてきた女性は、おしゃれなコートを雑に丸めてソファに置いた。


用意した二人分の水は、女性が来たことに歓喜して同時に水滴を滑らせ円を作る。


こいつらは、ぬるくなるまで飲まれないことを多分知らない。


女性は飲み物を受け取ると、世間話を始めた。


去年よりも寒い冬に耐えられず、最近とうとうカーペットを買ったらしい。


やっぱり寒いよね、と言いながら円を作った水を紙ナプキンですくい上げると、水たちはまるで前から一緒だったかのように収まっていくのが、なんとなく癪に障った。


メニューとにらめっこしている女性と同じように、パラパラともう一つのフィルムに覆われた冊子をめくる。


メニューが決まっていた僕には、勿論意味を成さない行動だ。


会社での出来事に会話を弾ませるのはいつぶりだろうか。


丁度運ばれてきたハンバーグに、女性は顔を綻ばせて、丁寧な作法で食べ始める。


僕もそれを見ながらいつもより丁寧にドリアを口に運ぶ。


他愛ない会話をしながら夕飯を食べ終えると、本題に入る気合いを入れるかのように、女性は食後のコーヒーを口に一回滑らせた。

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