平安物語
さやか
1
昔々。
平安の世は貴族の時代と称され、人々の外見は美しく華やかになる一方で内面は除く荒んでいた。
式部もまたある女性を妬んでいる。
「おのれ..……納言!」
貴族が暮らす平安京右京地区。
少しばかり離れた村の中心で巫女の格好をする納言という十六の少女が扇子を高々と上げて舞を披露していた。
「天よ、この乾いた大地に雨を降らせてくれぬか?」
納言は天に祈る。
そこに同じ巫女の格好をした式部が現れると納言と対なして舞を披露する。
彼女たちを取り囲む民衆は暫く様子を伺っていると青々とした空が曇りだして雨を降り始める。
民衆はここ何日も日照り続きで途端に雨が降りだすと皆は喜んで二人を取り囲んで踊りだす。
そこに邸の兵たちが乱入すると彼女たちをそれぞれの邸に連れ戻す。
「これは御主だけの力と思うな!」
式部はさらに納言を妬む。
それから数日。
式部はあの日を境に納言の姿を見ておらずに心配して彼女の邸に向かう。
そこで痩せ細った納言に式部は絶句する。
「式部さん、こんにちは」
納言は上半身を起き上がらせる。
「な、納言!この有り様は何じゃ?」
「申し訳ございません。少しばかり風邪を拗らせました」
「お前にもしもことがあったら私は生きていけぬでないか?」
「私は式部さんに何があっても生きていけます」
「ぬかせ!お前は私の好敵手だ」
「私はあなたを好敵手だと思っていません。私にとってあなたは一人の友です」
式は納言の邸を後にすると急いで自分の邸に戻り、巫女の格好に着替えると村の中心で舞を披露する。
外はあいにくの雨で兵たちは式部を心配して邸に連れ戻そうとするも式部はひたすら舞を披露した。
「天よ、私の命はくれてやるが納言だけは助けてくれねか!」
式部は願い続ける。
数日。
式部は肺炎に罹って息を引き取る。
「納言」
式部は直前にそう呟いた。
納言は体調も良くなって村の中心で舞を披露する。
「私は生き続ける」
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