節目稲荷の怪談噺

さやか

始まりは

このお話は平成の終わりに友人と京都へ旅行に行った時のことです。

岡山市に住む稲荷は大学の友人である美緒と恵理加と新幹線で岡山駅から京都駅に向かい、その地に降り立つ。

3人は3日間の中で安井金比羅宮、八坂神社、清水寺と色々な観光スポットを巡り、伏見稲荷大社に訪れる。

恵理加は鳥居をバックに2人を写真に撮る。

すると稲荷は少し頭痛を訴えた。

「大丈夫?」

「うん」

稲荷は2人の機嫌を損ねるわけにいかずに大したことがないように振る舞う。

しかし、千本鳥居をくぐるにつれて頭痛の酷さが増していく。

美緒も恵理加も心配になって売店に設置してあるベンチに稲荷を座らせる。

「ごめん。少し休んだら良くなると思うから2人は先に行ってていいよ」

稲荷の気遣いに2人は稲荷山に歩いていく。

稲荷の頭痛はおさまることはなく、とうとう幻覚まで視えてしまう。

(我は装束稲荷神社の蕗乃金平の黒狐なり……)

目の前に黒い狐が立っている。

周りはその存在に気づいていない様子だ。

やはり幻覚なのか?

稲荷は頭を押さえる。

(稲荷よ、よく戻られた。我々と共に歩んでいこう)

稲荷山を下山した美緒と恵理加はベンチに座っているはずの稲荷がいないことに戸惑う。 

「稲荷?」

恵理加も美緒も辺りを必死で捜したり、彼女のスマホに電話するもとうとう警察騒ぎとなって騒動になる。

けれども彼女が戻ってくることはなく、事件は迷宮入りとなった。

後日。

2人は大学を卒業した1年後。

カメラマンとして活躍する恵理加は伏見から少し離れた場所にある小さな稲荷神社を訪れる。

そこで暫く写真を撮っていると横目を長い艶のある黒髪に白い狐のお面を付けたミニの淡いピンクの着物を着た女が通り過ぎた。

女は本堂の裏に歩いていくと恵理加は何故か彼女の後を追いかける。

だけど彼女の姿はなかった。

確信はないけど、あれは稲荷だと彼女は言い張る。

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