生えてきた目玉

 一週間前に壁から目玉が生えてきた。きょろきょろ動き、呆気にとられている私を見つけると大人しくなった。瞼もまつ毛もない目玉。目玉しかないから感情はわからない。ただ、私を見ている。透けていく私を見ている。あいつが現れてから私の肉体は現実を離れていく。目玉の数は日に日に増えた。やつらは私を見ている。私のことだけを見ている。私は透けて透けて、透けていく。「君、何もないんだね」と言う声が聞こえて、あ。暗転。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る