俺だけ持っている【異世界の記憶】スキルが最強すぎる件〜ダンジョン溢れる現代を、チート知識と数多のスキルで超速レベルアップして無双します〜

あおぞら

第1章 小鬼王討伐

第1話 成り上がりの始まり

 ―――地球にダンジョンが現れた。 


 そんなラノベのようなことがあるかと言いたい所だが、全く嘘ではない。


 一〇〇年前の二〇二三年一月一日零時零分零秒ぴったりに、世界の至る所で様々な種類のダンジョンが出現した。

 それは空間に亀裂が出来たかのような物だったり、洞窟のような物だったり、はたまた古代の建築物の様な見た目だったりと姿形はバラバラ。

 そのため当時の人類はダンジョンが一体何なのかを国力を上げて調べ始めた。


 そしておよそ半年で色々な事が分かった。


 まずダンジョンは当たり前だが地球の物ではないと言う事だ。

 更にダンジョンの中には、後にモンスターと呼ばれる生き物が居て、モンスターは一番弱いものでもプロの格闘家と同等の強さを保有しており、放置しておけばダンジョンブレイクと言うモンスターが外に溢れ出す現象が起こる。

 この様に一見人類には勝ち筋が無いように見えるがそんなことはない。


 ある時、一人の軍人が銃でモンスターを殺すと、ステータスと呼ばれる自分の身体能力が書いてある自分にしか視えない宙に浮かぶ半透明のボードと、スキルが手に入った。

 その力は凄まじく、魔法が使えるようになったり、まるでアニメのような事が出来るようになった。

 更にモンスターを倒せば倒すほど体はより頑強なっていった。

 その御蔭で人類はモンスターに対抗する力を手に入れた。


 これが、俺――八神響也やがみきょうやが【異世界の記憶】を手に入れる丁度一〇〇年前の出来事だ。





***





「お兄ちゃん、ご飯できたよ。もう起きて」

「ん……後もう少し……」

「ダメだよお兄ちゃん。今日はこれからバイトがあるんでしょ? 私もこれからバイトなんだから」


 俺は妹である梨花りんかの声で目を覚ます。


 まだ寝起きで髪もボサボサな俺と違って、梨花の綺麗で長い黒髪はサラサラのストレートヘアー。

 高校一年になった梨花は少し童顔だが恐ろしく顔が整っており、身内の贔屓目を抜いても超絶美少女間違いなしだろう。

 それは見た目だけでなく性格面もそうだ。


 両親が五年前のダンジョンブレイクで死んでしまってから貧乏となってしまった俺たちだが、本来であれば兄である俺が梨花を養って行かないといけないはずなのに、俺の負担を少しでも減らそうとバイトをしてくれる。

 その御蔭で一時期一〇個程のバイトを掛け持ちしていた俺だったが、現在では梨花が二つに俺が五個と大分楽になり、俺も学校に通えるようになった。 

 それだけでなく何時も帰りの遅い俺の代わりに家の家事をしてくれる。


 これ程までに兄思いな優しい妹がいるだろうか?

 俺は居ないと思うし、そもそも今まで会ったことがない。


「何時もありがとな梨花。高校を卒業したらちゃんとした会社に就職して梨花が働かなくてもいいようにしてやるからな」 

「私も早く卒業してお兄ちゃんを支えれるように頑張るね」


 ……お兄ちゃん泣きそう……こんなにいい子に育って……。


 俺は感動しながら梨花の頭を撫でて立ち上がる。

 そして作ってもらった超絶美味しい朝食を食べてから歯磨きをして顔を洗いボサボサの髪を整えて服に袖を通す。


 今日は二一二三年一月一日。

 正月だが俺は配達のバイトで、梨花は大型ショッピングモールにある店の接客。

 今日は正月と言う事もあり、この一つしか入れていない。


 さて……それじゃあ今日も一日頑張りますか。


 こうして何時もと変わらない俺の一日が始まる……と、この時の俺は思っていた。

 

 今日が俺たち兄妹の人生の転換期である事など、この時の俺は知らない。




***




 ――正午頃――


 俺は次の配達時間まで時間が空いていたので、近くにあった公園で自転車から降りて休憩する。

 皆今では全自動車に乗っているが、俺にはそんな高価なものを買えるお金はないので、自転車を使っている。

 俺は公園のベンチに座り、次の配達場所を確認。


「―――次で最後の配達か。えっと……おっ、丁度梨花のいるショッピングモールの近くじゃないか。終わったら迎えに行くか」


 運がいいことに最後の配達場所は梨花の居るショッピングモールからほんの何百m程の距離にあるマンションの一室からだった。

 これなら梨花を迎えに行くことが出来るだろう。


 そうと決まれば早速梨花にRainで連絡する。

 現在はスマホとか言うものではなく、指輪型携帯が主流で、ステータスボードの様に自分にしか視えない半透明のボードが現れる。

 俺達にとってはめちゃくちゃ高いが、頑張って二人分買った。


 『今日迎えに行くね』と送信すると、偶々休憩時間だったのか直ぐに返信が帰ってきた。

 『了解!』という言葉と敬礼をした犬と猫のスタンプ。

 

 俺はそんな可愛らしい返信に顔を綻ばせながら自転車を漕ぎ始める。

 正月は毎年凍えるように寒いが、一年に三回しか無いご馳走の一回が今日なので、寒さも感じないほどにテンションが上っていた。

 

 自転車を漕ぐこと二〇分。

 最後の配達場所に着いたので自転車を降りてエレベーターを使って目的地まで移動する。

 そしてインターホンを鳴らす。


「〇〇配達の八神です。お届け物をお持ちしました」

「はーい、今行くからちょっと待っていてください」


 そんな言葉と共にドタドタと言う音が聞こえ始める。

 そしてほんの数十秒で玄関の扉が開き、中から見た感じ年上っぽい超美人なお姉さんが現れた。

 しかし配達を長くやっているとこうした美人にも免疫ができてしまうわけで、特に何時もと変わらず応答する。


「此方がお届け物です」


 俺は会社から支給された空間バッグから最後の荷物を取り出す。

 これを彼女に渡せば俺の仕事は終わりだ。


「あ、ありがとうございました。後少しで出かける所だったので早く来てもらってありがたかったです」


 そう言ってホッとした表情をした後で礼をしてくるが、俺は急いで頭を上げさせる。


「いえいえお構いなく! 妹を迎えに行くために早く来ただけですから!」

「あ、そうなんですね。なら早く迎えに行ってあげて下さい。私も直ぐに行かないといけないので」


 俺達はお互いに挨拶をして別れる。

 そして再びエレベーターを使って下に降り、自転車で梨花の下へと向かう。


 現在の時刻は一二時三〇分。

 梨花のバイトが終わる一時までには余裕で間に合うだろう。

 なら梨花のバイトが終わるまでに何かプレゼントを買うか。


「何が良いかなぁ……」


 そんな事を考えながら自転車を漕いでいたその時―――


『―――ダンジョンブレイク発生!! 繰り返します、ダンジョンブレイク発生!!    

場所は《次元第一五〇番ダンジョン》。市民の皆さんは速やかにシェルターの中に隠れて下さい!』


 突如ダンジョンブレイク発生を知らせる市内放送が流れる。

 その瞬間にあらゆる建物や車の中から人が出てきて、近くにあるシェルターに一目散に逃げていく。

 しかし俺はそんな中、一人足を止めていた。

 なぜなら……


「《次元第一五〇番ダンジョン》……ショッピングモールの近くのダンジョンじゃないか!」


 妹の居るショッピングモールのすぐ近くのダンジョンだったからだ。

 アソコはダンジョンの中でも一番危険度の低いF級ダンジョンだが、俺達一般市民にとっては災厄でしか無い。


「クソッ……一体プレイヤーは何をしているんだ!!」


 俺はプレイヤーに文句を言いながらも自転車に飛び乗って閑散とした町中を全速力で走る。


 このままでは梨花が危ない……ッ!

 何としても守らないと……。


 俺は自転車を漕ぎながら何か武器になるものを探す。

 するとラッキーな事に乗り捨てられたバイクがある工事現場を見つけた。

 そこに自転車を止めると鉄パイプを空間バッグに何個か入れ、免許など持っていないが今回ばかりはしょうが無いので自動バイクに飛び乗り、携帯でバイクをハッキングして走らせる。

 昔父さんのバイクの後ろ何度も乗っていたので運転の仕方は分かる。

 と言うかそもそも自動なので、目的地さえ教えれば何もしなくていいのだが。

 

 やはりバイクは凄まじいもので、自転車とは比較にならない程の速度で誰も居ない道路を走っていく。

 すると直ぐにショッピングモールの玄関口が見えてきた。

 モンスターが既に外に出たのか、出口は壊されていた。

 梨花のバイト先は一階にある服屋だし、このバイクはタイヤではなくて浮力で走っているので、そのままバイクに乗ったまま突入すると――


「うっ!!」


 俺は目の前の惨状を見て胃から迫り上がってくるものをなんとか飲み込んで耐える。

 ショッピングモールの中は、既にモンスターはいないがモンスターに殺されたであろう人間の死体が転がっていた。

 しかし今はそんな事を気にしている場合ではない。


「頼む無事で居てくれ梨花……ッッ!」


 俺はバイクに乗ったまま既に生存者のいないショッピングモールの中を探し回る。

 そんな俺の願いが通じたのか、尻餅をついてはいるものの生きている梨花を見つけた。

 しかし目の前には最下級モンスターであるゴブリン。

 最下級のはずだが、俺達一般人にとっては超人に感じてしまう程の威圧感を放っていた。

 

 俺はその姿に一瞬ビビるも覚悟を決めてバイクに乗るとスピードを更に上げ、そのままの勢いで―――


「梨花に触れるなクソゴブリンがあああああああッ!!」


 ゴブリンにぶつかった。

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