今を振り返る

浪人ダディ

第1話 成人式

 ついこの間大学の入学式があったかと思えば、もう成人式が訪れた。今はもう成人式ではなく、"ハタチの集い"なんて名前に変わってしまった。それもそのはずで、何年か前に法が改正されて、成人の定義が18歳以上になったらしい。選挙権を増やしたいのが目的だろうが、競馬も酒も煙草もやらせてくれないようじゃ意味がないように思う。僕はこの"ハタチの集い"にあわせて行われた中学の同窓会に出て、そして"ハタチの集い"に行き、家族の環境も変わりそうになっている今、何かを振り返りたいと思っている。何かを振り返るとき、脳みそに浮かんでは消えず、それが重みを増して僕を苦しめていることがよくある。だから、こうやってつらつらと文字を並べて自分を軽くしていきたい。本来ならメモ欄に適当に済ましていることが多いが、折角なら誰かに読んでもらえられたらと思って先程このアプリを見つけたところだ。展開もおそらく感動的な要素もないと思うが、浮かんだことをまとめてみたい。

 この前、大学の授業の課題に他者から見た自分を友達に聞き、それをまとめろというものがあった。友達がそれを聞いてきたから、後々やることなら今聞いてしまおうと思って、自分の性格的特徴を教えてもらった。大学で連んでいる仲のいい4人のグループだから、だいたい真実なんだと思う。親が医者の友達には自信過剰で、向かう水なところがあり、言語化能力に長けている。(この小説がとんでもない駄作になるとは思うが。)それから偏見的で、先入観で判断しがちなところがあるそうだ。ここまで無茶苦茶に書かれ、最後の1行に申し訳程度で素直な性格で話しやすいとだけあったが、正直良い気はしなかった。いや、もちろんこういう機会は作ってもらわなければ、飲み会の終盤の流れの悪口の時間に言われるくらいしかないのだからありがたいことはありがたいが、それにしても辛辣なコメントで、たった6.7行だったが、読み終えた後少し疲弊してしまった。それからこいつのことが少しだけ嫌いになったが、次の日の朝片道2時間の電車の中でこのことを頭で考えて、それから自分のことを客観的に見てみると、まあそんなもんだろうなとも思えた。だからそいつに対する少しの嫌悪感はすぐに消えた。それから女の子からは、「感受性豊か、共感能力が高い、思ったことをはっきりいう、ちゃんと断れる、好きなことにまっしぐら、面白い、的確なツッコミ」と、これを他人に読ませる小説に書いているのはだいぶ僕の羞恥心も黙っていないと思うが、事実なのだから仕方がない。それから意外なことに、「面倒見がいい」があった。僕は長男で妹がいるのかが影響しているのか、自分では全く思ってもいなかったことが出てきてひどく驚いた。それから、グループ4人目の最後の女の子からは、これまた感受性豊かが入り、「感情的だけど主観的だけではなく客観的に物事がみれている。自然を愛している。何に対しても分析がうまい。好きなものにまっすぐ。初対面から印象が変わらない。」と、最後の1行に僕の価値観が好きだとあった。この子はちゃんと僕を嬉しくさせてくれた。普通こういう時はこうやって人を幸せにさせるのが道義じゃないのかと医者の子に言ってやりたくなった。でもそれではつまらないから結局そういうやつがいてくれて成り立つものだとも思った。僕を形成する価値観とは一体どこで生まれたのか。それはおそらく自分の人生観や考え方を変えた人間に会って、少しずつ削られて尖らせるところは尖らせ、丸めるところを丸めた結果こうなったのだと思う。成人式の2日前に行われた中学の同窓会で僕はその価値観を変えるような数人の人間の中で、親を除いて最も若く出会った女性に会った。

 

 

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