華散る頃、現世にて貴方の影を探す…

@KaiLu24

第1話 悪夢~格子の内側

目が覚めて、貴方のいない世界で貴方を探す。貴方は間違いなく存在していた。現世(うつしよ)にて…。

交わることのない世界で、貴方は別の人生を歩んでいた。私はまた夢を見ている。ほんの少し歯車が狂うだけで、こんなにも未来は違う。私は貴方の違う未来を、一体いくつ見てきたんだろう。


私が特殊な人生を歩んできたことは、最近気が付いた。幼少期にて、現代の遊郭に身を堕とした。それを口にしたのは、三十を過ぎたころ。

幼いながら男に奉仕をさせられ、それを他言すれば家には帰さぬと…。幼いながら、誰かに言ってはいけないことだと思った。私はいつか、私を迎えに来てくれる誰かを、格子の内側で待つことにした。迎えに来てくれることを夢見て…。


幾度季節が廻り、時が経ったのか…。待ち人は来なかったが、十一歳にて、ようやく男から解放された。新居に引っ越して、男が私を捕まえにくくなったからだ。気が付くと、無数の傷が手首に生々しく残っている。私に残された感情は、自殺念慮としっかりと結び付けられていて、二度と離れられないんだと悟った。


完璧でいないと、いつも笑顔でいないと、私は私を保てない。この世界で私を守れるのは私だけだから…。


人に心を開けない。それでも笑顔のお面が私を守ってくれる。外面は良かった。そして誰も私の、格子の内側の私に気づかない。それでいい…。誰にも知られたくない。汚れて、ずっと泣いている私に、誰も気づかないで…。

そして眠りにつく。この悪夢から早く目が覚めますようにと、願いながら私は深く堕ちていく…。

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