この終わった世界で明日、朝陽を拝めるように

キカハアユム

第1話 出会い

side 朝陽

これは、一緒に施設暮らししていた、死んだ祖母から聞いた話だ。

僕が産まれる60年程前、未知のウイルスが世界的に流行した。多数の死者が出る程の強いウイルスだったらしい。

そのため人の自粛要請が出て、仕事もできずリストラされる人も増え、人々のストレス値も上がった。国の政治が崩壊に陥ったところもあったらしい。

そんな世界の状況下で、自称天才科学者が、あるワクチンを作った。そしてその作ったワクチンを、仕事を失った人々に受けてくれたら50万円あげるから治験に協力してくれと言い、被検体になってもらった。

これがこの世界が、もっと最悪な状況に陥ることになるキッカケとなる。

欲に目が眩んだ人々も、自称天才科学者の作ったワクチンの治験をした。

確かに、流行りのウイルスにはかからなくなったし、かかっていた人も治っていた。世界に平和が訪れた、日常がやっと戻ってきたのだと思われていた。

だが、1年後。治験を受けた人間の一部が、鬼、悪魔、吸血鬼という化け物になってしまい、人を襲い始め、食べるようになった。

祖母が言うには、化け物になったのは欲深い人間やこのウイルスが流行っている状況下で人を精神的に追い詰め、最悪死に至らしめるようなことをした人間たちだったみたいだ。

そこで、僕はふと気づいたことがあり、問いたのだ。

『化け物にならなかった一部の人間は、どうなったの?』と。

僕のその言葉に祖母は、こう答えた。

化け物にならなかった人は、この状況下で精神的に追い詰められてしまった人たちで、その一部の人間は化け物たちを倒せる力を持った。そう私たちも持つ、華の血よと。

それを聞いて僕は、自分の血が嫌になった。だってこんなの罰だ。追い詰められたうえに、一部の人は追い詰めた相手を倒す力を得た。望んでもいないのに。望んだ人がいたとしても、この血は化け物たちに狙われる美味い血。

だから沢山の死者が出て、今ではこの血を持つものは、僕の住む国、日本では100人もいない筈だ。 戦えるものはもしかしたら、一桁かもしれない。

僕が考えていることが、わかってしまったのか祖母はこう言った。

『本当に神様は酷いわね。私たちはこんなの望んでいないわ。食べられる人を何人も見た。同じ血を持つ人が、泣き叫んで引き裂かれ、食べられるのは、今思い出すだけでも胸が苦しくなる程痛いし、いつか自分もと思うと恐いわ。私の血は戦える血だったのに、私にはこれを使えなかった。後悔だらけよ。だからね、朝陽。貴方には後悔して欲しくない。貴方も戦える、倒す力がある。嫌なら、使わなくてもいい。だけど後悔が無いように生きて欲しい』と。

この数日後に、祖母は倒れた。そして、僕にこう言った。

『私の使わなかった血の力を貴方に渡すわ。同じ華の血を持つ貴方だからきっと大丈夫。使うか使わないかは、貴方の選択に任せます。でもこれだけ覚えておいて。この血の力は、朝陽が愛した、守りたいと思える、大切な人のために使いなさい』

僕に血の力を全て与えた祖母は、そのまま息を引き取った。

この時はまだ、そんなの絶対使わないと思っていた。

だけど、僕にも愛すべき人ができた。



鬼、悪魔、魔物が暴れ回る戦場を、走り抜けて来たシベリアンハスキーが僕の元へ戻ってくる。

「サスケ、お帰りなさい。現状報告お願い」

シベリアンハスキーは、高身長イケメンの男の姿に変わり、僕を見つめて言う。

「現地点から南側で鈴歩と夏が率いる部隊が、魔物たちと戦闘中。少し厳しそうだった。でも東側で戦闘していた、椿が率いる吸血鬼の部隊が鬼の討伐完了したみたいで、そのまま援護に行くと伝達だ。西側、妙さん率いる部隊は悪魔と戦闘中。こちらは問題なさそうだ。それでお前の目的の怪物は、北側にやはり居た。勇利を大事そうに抱えてな」

「了解。サスケ、そのまま椿と援護に行って。僕はこのまま怪物討伐しに行く」

「1人で大丈夫なのか」

「うん。むしろ1人じゃなきゃ、巻き込んじゃうよ?」

「上目遣いで言うな。巻き込まれるのは、勘弁。飼い主が目覚める前に死にたくない」

「ははっ、サスケはそうだね。ほら、君は早く飼い主の元へ帰るため、僕は愛しい彼女を救うために行かないと」

僕がそう言うと、サスケは頷き、シベリアンハスキーの姿に戻ってから、走って椿たちの元へと向かって行った。

「待っててね、勇利。今助けに行く」

僕はそう言い、怪物の元へと向かった。



バシャンっと、空から大量の水が零れ落ちた。水をモロに食らった、朝陽は溜息をついて上を見上げた。

3階の教室で、派手な見た目の女生徒3人がクスクスと笑っている。

(あぁ、お気に入りのロリータ服が台無し)

朝陽はそう思いながら、その場を離れた。

濡れた服のまま、校内へと入り、そのまま保健室へと向かった。

そこにいた保健室の男性教諭米田は、またかと言うかのように朝陽を見つめた。

「まただよ。替えの服ない?」

「男性用白衣なら。俺のでもいい?」

「男だから、そういうの問題な〜い」

「そうだった」

米田は笑って、デスクの引き出しから、白衣を取り出した。

朝陽は、ゴシックロリータを脱いで、下着だけの状態になる。

「すごい違和感あるよね。ゴシックロリータの下は、男性用下着」

「ゴシックロリータを着てても、男だからね。それに学校で、女性用下着履いたら、変態と思われちゃう」

白衣を受け取り、それを着てから、濡れた下着を脱ぎ、流し台へと向かい、びしょ濡れのロリータ服を絞った。

「でも朝陽、学校では女の子の格好しかしないもんね」

「まぁ、そうだね。そのせいで、女の子に恨まれる。今回もどうせまた、イケメンの丸内先輩が僕のことを可愛いと言ったんだろ」

「実際、女の子より可愛いからね、朝陽」

「やーん、先生セクハラ〜」

「ごめん、ごめん。はい、ハンガー」

「あんがと、先生」

朝陽は米田からハンガーを受け取り、ロリータ服掛け、風通しのいい所に干した。

「このウィッグ気に入ってたのに」

ツインテールのピンクのウィッグを取り、それも摩擦がかからないように、絞る。

「ドライヤーとかないよね、先生」

「あるよ」

「流石」

朝陽はドライヤーを受け取り、コンセントを挿してから、ウィッグネットを外し、肩まで伸ばされたピンク色の髪を乾かす。

髪を乾かし終えてから、ウィッグも乾かした。

「そろそろ訴えてもいいと思うよ」

「嫌がらせ?」

米田の言葉に、朝陽は聞き返す。

「うん。もういじめだよ。本当は見過ごせないんだけど、朝陽が辞めろと言うから、見過ごしてあげてるけど。ねぇ、理由あるの?」

朝陽は、流し台からソファへと向かい、ソファに座る。

「皆澤さんって知ってる?」

「うん。転校した子だよね」

「転校する前にさ、学校の屋上に来て飛び降りようとしてるとこ見てね。いつ食われて死ぬかわからないこの時代だからさ、食われる前にと死ぬ人も多い。でも彼女が死のうとしている原因はいじめだ。死ぬのは反対しない、でも悔しくない?君が死んでも君をいじめた奴らは生き続ける。なんの罪も背負わず。僕が仕返ししてあげるよ。だから君はこの環境よりもいい所に行くべきだと祖母の知り合いが理事をしている学校紹介した」

「そんな事が…。仕返しって、もしかしなくてあのSNSの拡散?」

「そう。いじめの音声と写真をアップした。それで主犯の子の精神狂わせて心療内科へ。これでいろいろ人生を反省したらいい。でもその子の金魚のフンみたいについてた子たちがね、僕に嫌がらせするようになった」

米田は苦笑しながら言う。

「朝陽のやる事って正義のようで悪党みたいだし、なんかズレてる気もするし抜けてる気もするよね」

「否定はしない。僕は気まぐれだから」

「いいと思う。朝陽は、この世界で図太く生きてくれるといいな」

「…食われず、殺されず、祖母のように寿命で死にたいよ。そういえばうちの学校で最近、行方不明者出てるよね。女生徒数名と教師。なんの仕業かな」

朝陽はそう言い、米田を見つめた。

「わからない、でも早く見つかるといいね」

「そうだね。ねぇ、先生。このままだと帰れないからさ、僕の体操着持ってきて」

「こら、先生をパシるなと言いたいけど、朝陽お友達いないもんな。待ってて」

そう言い米田は、保健室を後にする。

「はぁ……、緊張したわ」

(本当に、隠すのが上手い。血の力でどうにか種族を理解できるし、警戒はしてるけど。…鬼ってあんなに人間らしくなるものなのか。今まで出会った中で1番ヤバいだろ)

朝陽はそう思いながら、脱力する。

今回の行方不明者の件は、朝陽は米田の仕業だと思っている。

ただ行方不明者の遺体が見つかっていないため、確信を得られなかった。

鬼。人の肉喰らう。そのため人の遺体が汚いのが特徴。

悪魔。人の生気を喰らう。そのため人の遺体がミイラ化しているのが特徴。

魔物。鬼や悪魔に殺された人の魂(喰らった鬼や悪魔が死ぬと解放される)が、怨念持ってしまったもの。人を喰らうことはないが、殺すことはある。遺体は個々による。

警戒すべき化け物は、この3つだ。だが人間でないのは、もう一種族いる。

吸血鬼。人の血を吸う為、人と共存することを選んだ種族。人間と同様に鬼や悪魔、魔物に狩られる対象になっている為、絶滅危惧種に近く、世界全体で4万人程しかいないと言われている。

(あ、帰ってくる……鬼の気配がもう1人)

「お帰りなさい。あれ、丸内先輩もいる」

「さっき偶然会ってね。というか、朝陽。体操服なかったぞ。丸内が貸してくれるらしいから感謝しろよ〜」

「まじか。隠されたかな〜。丸内先輩ありがとうございます」

「ううん、いいよ。…本当に男の娘なんだね」

「ははっ、ちゃんとついてますよ〜」

朝陽はそう言い、体操服を丸内から借りる。

「朝陽は、今日もいい匂いがするね」

「そうですか? ちなみに何の匂い?」

朝陽は白衣を脱ぎ、体操服を着ながら聞く。

「「薔薇」」

丸内と米田が声を合わせて言う。

ゆっくりと朝陽は、2人の顔を見つめる。

その顔は、獣のような捕食者の顔だった。

「薔薇の匂い好きだから、シャンプーとか香水、柔軟剤がその匂いなんだ」

着替え終えた朝陽は、そう答え濡れた服とウィッグを持って言う。

「服乾かすために、帰ります。またね、先生、丸内先輩」

「うん、またね朝陽」

「なんかあったら、またおいで」

そう言って2人は、手を振る。

朝陽は平常心を装って、保健室を出て、廊下を早歩きで歩き、階段を足早に登り2階の自分の教室へと向かう。

そして荷物を取り、警戒しながら学校を出る。

帰路までの道も、いつも以上に警戒して帰宅した。

一人暮らしをして住んでいるアパートに着くと、直ぐに鍵を閉め、体操服を脱いで洗濯機に突っ込み入れ、回す。

そして浴室で濡れたゴシックロリータを手洗いしてから、シャワーを浴びる。

「危なかった…。流石、鬼。僕を食う気満々」

朝陽の身体は震える。命の危機を感じたから当たり前だった。

「……いつでも倒せたとしても、鬼が2人はキツイ。絶対食われる」

朝陽は自分を落ち着かせてから、浴室を出て、下着を履き、ピンクのロングパーカーに着替えてから洗濯物を乾かした。

そして冷蔵庫から冷凍チャーハンを取り出して、皿に出してから電子レンジで温める。その間に、スープカップにわかめスープの素を入れ、ポットからお湯を出して注ぎ、スプーンで混ぜる。

電子レンジが止まり、皿を取りだし、勉強机へ朝陽は持っていく。そしてスープカップとスプーンを取りに行き、勉強机まで持っていく。

椅子に座り、引き出しからノートを手に取り開く。

ノートには、朝陽が書いた学校の見取り図が書かれている。

朝陽はピンクの蛍光ペンを持つ。

「確か……鬼の匂いと血の匂いがしたのはこの辺だったな」

朝陽は1階にある体育館に蛍光ペンで丸を書く。

(鬼がいるなら、上か下。鬼の数は今のところ2人しかわからないから、行動がまだできない)

朝陽はペラリと次のページを捲り、生徒名簿を見る。

そして、今日の行方不明者に線を引く。

(行方不明者は、これで10人。1年の女生徒が4人。2年の女生徒が2人。3年の女生徒が3人。女教師1人。この行方不明者の共通点は……)

朝陽は鞄からメモを取り出して、捲ってみる。

「いじめの主犯と性格に難アリで評判の悪い人。となると…次狙われるのは、あの子たちかもしれない」

朝陽は、自分に嫌がらせをする女生徒3人を思い浮かべる。

「なんのために女性を狙う? というか、なんで僕を食いたそうなのに狙わない? 男性ではいけない理由がある」

朝陽はハッとして、別のノートを引き出しから取り出す。

そのノートには過去の化け物の事例が記されている。

ペラペラとかページを捲り、朝陽はあるページで手を止める。

(あった……。化け物に無理矢理交尾された事例。これ、確か腹が張り裂けた死体だらけだったんだよな。この化け物はまだ見つかってない。……1年前の事件。米田と丸内が来たのはこの後だな。となると目的は……交尾か。でもなんでそんなこと……そういえば女の鬼は討伐され、あまりいないんだっけか。種族増やすために、人間に手を出してるってことになるのか)

朝陽は溜息をついてから、蛍光ペンを置き、スープカップを持ち、わかめスープを飲む。

(血の匂いがしたってことは、何人か腹が張り裂けて死んでる可能性もあるか。人間が鬼を産むなんて不可能に近い、人間が鬼の子種に堪えられる訳ない。……!いや、待て。確か化け物を討伐する組織に鬼と華の血のハーフがいるって聞いたことがある。つまり、華の血が行方意不明者にいた場合……)

「産まれる可能性があるかもしれない。となると早めの対処が必要……」

(今の僕に、この華の力は使いこなせるのか?)

朝陽は溜息をつき、1度考えるのを辞めることにし、少し冷めてしまったチャーハンを食べる。

チャーハンとわかめスープを食べ終え、洗い物をしにながしへと向かう。

水道から水を出し、スポンジに洗剤をつけて皿を洗い始めた朝陽は、再び考え始める。

(この件……もしかしたらあの組織に情報が届くか。そうなると、協力した方がいいかもしれない。でもいつ来るかは、わからない)

「もし来てくれたら、討伐してるとこ見て、戦い方を学べるかもしれない」

朝陽はそう呟き、洗い物を急いで終わらせ、再び勉強机へと戻り、スマホを鞄から取り出して、タップする。

そして先程の組織について、検索し始めた。

化け物討伐組織「フィオーレ」

そこでは、6人の戦える力を持つ華の血の戦闘員と化け物に怨みを持ち戦う意志を持ち入隊し訓練を受けた人、そして人間の味方である吸血鬼の部隊がいると言われていた。

「あった……。へぇ、戦えない華の血の人の保護もしてるんだ。えっと、電話番号……、携帯電話だ。情報を知られない為か。とりあえず電話かけよう」

朝陽はその携帯の電話番号に電話をかける。3

3コール目で電話が繋がる。

『お電話ありがとうございます。化け物討伐組織フィオーレのボスをしております、華巻桜子です。依頼でしょうか、入隊でしょうか』

「依頼です」

『そうしますと、依頼内容の前にお名前宜しいですか?』

「野薔薇朝陽です」

『野薔薇朝陽……、もしかして野薔薇陽子さんのお孫さん?』

桜子の口から祖母の名前が出て、朝陽は驚く。

「な、何故祖母の名を」

『何度かお会いして。こちらは保護したかったんですけど、断られてしまっていて。陽子さんはお元気ですか』

「……2年前に他界しました」

『っ……そうですか。お悔やみ申し上げます。陽子さんの華の血は、かなり稀少なものでした』

「稀少?」

『はい。華の血は、例え血の繋がらない人でも、同じ花の香りがしたりします。わかりやすく例えると、佐藤さんが多いのと同じです。そしてこの世で最も稀少な華の血は、薔薇と言われています』

「薔薇……そんなにいないんですか」

『えぇ。3人しか存在しませんでした。そして薔薇の血は1つでも途絶えてはいけないんです。何故かわかりますか?』

「……わかりません。祖母は戦える血としか言わなかったので」

『それはほぼ正解に近い。薔薇の血の保持者は、全員戦える華の血と言われています。そしてそれぞれの血で能力が違う、そして最強の華の血の力です。そのため薔薇の血の保持者が3人揃えば、世界に平和が訪れると推測されています。フィオーレの戦闘員、リーダーの子が薔薇の血の保持者で[支配]の能力を持っています。陽子さんは[祝福]でした。まだ見つかっていませんが、もう1つは[魅惑]と言われています。身内にいるのではとお聞きしたら、陽子さんは、孫の貴方は別の華の血の保持者と聞きました』

「…なるほど」

朝陽は少し混乱しながら、自分の血の能力を知ったのと、祖母が自分に血の能力をなぜ託したのか少し理解した。

『長々と失礼しました。えっと、依頼でしたね』

「あ、はい。僕の学校に鬼が2人います。この数日で、行方不明者が10人。おそらく体育館の天井で死んでいるかと。目的は、僕が推測するに交尾による繁殖かと」

『…陽子さんからお聞きした通り、凄い子ですね。学校は、鈴ノ森学園ですか』

「そうです。というと、討伐に来る予定でした?」

『えぇ。不自然な数の行方不明者が出ているという情報が耳に入ったので、明日、先程言ったリーダーの子と他の華の血の子たちを捜査に向かわせる予定だったの。明日大丈夫なら、うちの子たちと合流してくれます?』

「はい。あと頼み事が」

『何でしょう』

「討伐してるとこを参考に見せてもらいたいんです。戦い方を知りたい」

『……わかりました。それではまた』

「はい、また」

電話が切れると、朝陽はペンを持ち、ノートに『支配』『魅惑』『祝福』と書いた。

「最強の華の力。それでも、祖母はこの力を使えなかった。……なんの為に3つに別れた。祖母は何故、祝福の力を僕に受け渡した。……やめた。宿題して寝よう」

朝陽はそう言い、ノートを閉じてしまう。

宿題をした後、歯を磨き、朝陽は警戒しながら眠りについた。

翌朝、朝陽は身支度をし、アパートを出る。

「あら、朝陽ちゃんおはよう!今日も可愛いわね〜」

「大家さん、おはようございます。そして、ありがとう、可愛いでしょう」

朝陽はそう言い、女性の大家の前でくるりと回って見せる。ゴシックロリータのスカートがふわりと愛らしく舞った。

「本当に可愛いわね。でも今日は髪型違うのね?いつもツインテールじゃない?」

「実は、洗って乾かなくて。だから今日はピンクのセミロング」

「とても似合ってるわよ〜」

「ふふ〜ありがとう! あ、そろそろ行かないと。コンビニ寄って朝と昼を買っていくから。大家さん、行ってきます!」

「朝陽ちゃん、行ってらっしゃい!」

大家に手を振り、近くのコンビニまで歩いていく。

コンビニに入ると、カゴを持ってお菓子コーナーへと行き、ストロベリーチョコレートのスナック菓子とマシュマロを手に取りカゴに入れ、飲み物のコーナーへと行きペットボトルの烏龍茶をカゴに入れる。そしてそのまま紙パックの飲み物コーナーへ向かい、いちごミルクとミルクティーの紙パックを入れ、冷やされたフルーツサンドを2つ手に取って、最後にパンのコーナーでハニーチュロのドーナツとクリームパンを手に取りカゴに入れ、会計へと向かった。

会計し追えると、直ぐに外へ出た朝陽は、学校へと向かった。

学校へ着くと、上履きを履き、2階の教室まで向かう。

教室に入ると、朝陽と仲のいいクラスメイト黒髪眼鏡男子の君塚理央がいた。

「理央おはよっ、相変わらず早いね」

「おはよう、遅刻するよりいいだろう。それより朝陽。今日も朝ご飯食べてないんだね」

朝陽は自分の席に座り、先程買ってきたフルーツサンドとミルクティーを取りだした。

「最近考え事しててね、ご飯疎かにしてる」

「見てわかる。というか、朝陽。相変わらず女子より女子だな」

「それ、女の子の前で言うなよ」

「安心しろ、言わない」

理央は、フルーツサンドを食べ始めた朝陽を見て、ニコッと笑う。

「そういえば、この間も告白されていたね。男子に」

「んー、された。可愛いからね」

「自画自賛」

「自分に自信を持つべき。頑張って可愛くなったんだから、見てもらいたいしね。それにこの学校は、制服あるけど私服登校もいいから、思う存分オシャレできる」

「まぁ。……なんでさ、朝陽は女子の服好きなわけ? いつから?」

フルーツサンドを食べ終え、ミルクティーにストローを刺した朝陽は、理央を見つめて言う。

「可愛い服が好きなのは、小さい頃から。でも男の服もちゃんとある。女装するキッカケは、動画サイトメインに活動している、綺麗な男性タレントさん。男の子でも可愛い服を着ていい、スカートを履いてもいい。自由だよ、好きを貫けって。だから高校デビューで女装」

「なるほど。……なあ、朝陽。お前にだけは伝えようと思ったことがあるんだ」

理央が何時もより真剣な顔になり、朝陽はこくりと頷く。

「俺、学校辞めてさ、フィオーレの戦闘員に志願することにした」

朝陽は驚き、目を見開く。

「両親と妹の敵は、フィオーレの人が取ってくれた。だから俺はもう普通に生きようと思ってた。でもやっぱり家族の死を見てしまって、何もできない自分に罪悪感を感じていた。そんな時に、高校で朝陽に出会った。両親が化け物に殺されている。同じ境遇の朝陽は、唯一心から親友だと思える存在になった。だから伝えなきゃって」

「うん…、聞かせて理央」

理央は深呼吸をしてから、朝陽を真っ直ぐと見つめて言った。

「もう逃げたくない。罪悪感に押しつぶされたくない。そして、化け物から護ってあげたいと思える、大切な愛する人ができたから」

「…そっか、理央はやっぱり凄いな。応援する。……てか、愛する人って、いつできたんだよ! 聞いてないんだけど〜!」

「言ってないからね。でも俺の一方的な片思い」

理央はそう言い、朝陽のウィッグの毛先に触れる。

「理央イケメンだし、文武両道ハイスペックだから告ったら、絶対いけるのに」

「どうだろう。相手は俺の事そういう対象で見てないからな」

「アピールしろ、アピール。……なんかタイムリーだったから言おうかな。僕が華の血なの理央だけ知ってるじゃん」

「まぁ。それがどうかした。もしかして襲われた?丸内と米田になんかされた」

「いや、襲われ……なんでその2人?」

「人間ではない気がするから。なんというか雰囲気とか、いろいろ。あとなんというか、血の匂いがする時がある」

朝陽は驚きながら言う。

「理央の観察力凄っ。鼻良っ。普通の人間はわからないんだよ、普通」

「わからない時はわからないよ。でも、あれは雰囲気に覚えがあった。もしかして彼らは、鬼だったり?」

「正解。それに関して、フィオーレに連絡したら、今日元々捜査に来る予定だったみたい。その人たちが来たら合流して、僕は戦い方を学ばせてもらおうかなって」

朝陽の言葉に理央は、少し考えてから聞く。

「朝陽も、戦う側に来るの?」

「迷ってる。でも自分の身は自分で護らないととは思うし、今回のだって、これ以上は見過ごせない。僕のこと食おうとしてるのは確かだし。それに、今回入隊決めなくても、僕はフィオーレにとって保護対象。かなり珍しい華の血らしいんだ」

「なるほど。……誰か来るな」

「先生かな?」

「さぁ。……足音が2人分聞こえる」

「耳も良いとか凄いな、本当に」

2人は教室へと向かってくる足音に、耳を傾ける。

ピタッと2人のいる教室で止まり、教室に入ってきた。

2人は足音の主を見る。

「おっはよ〜♪フィオーレの鈴歩だよぉ〜♪」

セーラー服を着た元気いっぱいの小学生に見える金髪の少女が、挨拶をする。

「おい、鈴歩。はぁ…すみません。華の匂いがしたので、もしかしたらと思い、伺いました。化け物討伐組織フィオーレから来ました。相田サスケと言います」

黒のスーツを着こなす銀髪の高身長男子が、礼儀正しく挨拶をする。

「あ、どうも。野薔薇朝陽です」

「君塚理央です」

2人も挨拶を返す。すると、鈴歩が朝陽の元へと駆け寄ってきて、顔を覗き込んで言う。

「凄くっ、可愛いねっ!! 朝陽ちゃんはっ、男の子なんだよね??」

「そう、男の娘っていうの。可愛い服を着るのが好きなんだ」

「ふへへっ、いいね!朝陽ちゃんも可愛いからっ、とぉ〜っても似合ってるよ♪」

「あ、ありがと」

素直に気持ちを伝えてくる、鈴歩に照れてしまう朝陽を見て、珍しいと言いたそうに理央は笑う。

「理央、笑いすぎ。じゃあえっと、4人で体育館に行きましょう」

朝陽はそう言い、ゴミを片付けてから立ち上がる。

「4人? 彼は一般人のようですが大丈夫ですか?」

サスケは理央を見て、首を傾げる。

「フィオーレ入隊希望なので問題ありません。邪魔はしません」

「華の血を持ってない一般人だけど、鬼だとわかる観察力、鼻と耳も良いから結構役に立つよ。むしろ、僕が不安になるから一緒に連れて行きたいんです」

2人がそう言うと、サスケはわかりましたと返事をする。

そして、4人で教室を出て、2階から階段で1階に下り、体育館への道を歩く。

「そういえば、リーダーという人は?」

朝陽が質問すると、鈴歩が答える。

「王子ならね、もう体育館で調査してるよ〜」

「こら、鈴歩。あだ名で呼ばない。俺たちのリーダー、華巻勇利。女性ながら、見た目が王子様のようで鈴歩は、そう呼んでいます」

「へぇ〜。……鈴歩さん。そんなに王子様なんですか?」

「うん!王子はねかっこいいの!能力使わなくてもね、化け物倒せちゃうくらい、強いの!鈴歩とサッくん、つーちゃん、妙お姉さん、なっちゃんは、あんな風に闘えないよね?」

「全部あだ名…、妙さんしか言えてないな。でもそうだね、あんなに強い人はいないかもしれない。……凄いな、血の匂いが濃い」

体育館前の廊下で、サスケは上を向いて言う。

「サッくん、戻らなくてもいいの〜??」

「……戻った方がやりやすいか。ごめんなさい、元の姿に戻ります」

サスケがそう言うと、煙に包まれ、サスケがいた場所にシベリアンハスキーがいて、朝陽と理央は驚く。

「サッくんはね〜、わんちゃんなの!華の血を持つわんちゃん」

「犬にもいるなんて初めて知った」

「あぁ」

朝陽と理央は、理解がまだ追いつかないままそう言った。

「体育館へレッツゴー!」

そんなことお構いなく、鈴歩は体育館の扉を開けて中に入る。

「あ、やっと来たね。鈴歩、サスケ」

朝陽は息を呑んだ。体育館のステージに立っていた勇利という女が美しすぎたからだ。

モデルのようにスラッとした体型。短いサラッとした綺麗な黒髪。整った顔立ちに強調するように美しい、ルビーのように赤い瞳。今まで見た女性の中で一番美しいと朝陽は思えた。

勇利はステージから降りて、皆の元へと歩み寄る。

皆の元へも着くと、サスケと鈴歩の頭を優しく撫でてから、朝陽と理央を見つめてから、微笑む。

「初めまして。フィオーレ華の血戦闘員のリーダーをしています。華巻勇利です」

低くも心地のいい美しい声で、勇利は自己紹介をする。

「君塚理央です。昔貴方に両親の敵を取ってもらいました」

「やっぱりそうでしたか。久しぶりです、君塚さん。お元気そうで良かったです。そうすると、こちらの可愛らしい方が野薔薇朝陽さんですね。男の方だと聞いていたので、どんな方なのだろうと楽しみにしてたんです。まさかこんなにも愛らしい方なんて驚きました」

勇利はそう言い、朝陽を見つめて微笑んだ。

「えっ、あぁ、なんか美人さんに言われると照れるな」

「珍しいな、朝陽が女性に美人と言うなんて」

「ちょっと、理央。僕だって美人と思うことあるよ。声に出さないだけで……。勇利さんは、息を呑んだくらい美人だと思って。今まで見た女性の中で1番です」

朝陽のその言葉に、勇利の頬は赤く染る。

「えっと、ありがとうございます」

「王子が照れてる!珍しいね〜、凄いよっ、レアだよ〜♪ 朝陽ちゃん、すごぉおい!!!」

「ワフッ」

「2人ともからかわないでよ」

朝陽は、勇利の可愛らしい表情にキュンとする。

「あ、えっと。野薔薇朝陽です。今日はよろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします。それでは、本題です。確かに血の匂いと鬼の気配を感じます」

勇利がそう言うとサスケは、吠える。

「サスケは犬なのでよくわかりますね。これは致死量を超えた血の匂いです。常に換気をしているからか、あまり気づかれないようですね」

「あぁ、だから体育館の天井。でも今鬼の気配は無いですよね」

「この時間なら、米田は早朝の職員会議。丸内はまだ登校してない可能性が高いぞ。だから、もし行くなら今がいいかもしれない」

朝陽の言葉に理央はそう言い、皆を見る。

「そうですね。行きましょう」

4人と1匹は、体育館の天井裏へと行く唯一の手段である梯子のあるステージ裏へと向かう。

シベリアンハスキーの姿から人間の姿に戻ったサスケが、先に上がり、鈴歩、理央、朝陽、勇利の順に上へと上がる。

再びシベリアンハスキーの姿に戻ったサスケが匂いを嗅いで、皆を誘導する。

すると体育館の中央付近の天井にあたる場所で、血溜まりを見つけた。

そこにあったのは、腹が引き裂かれたほぼ裸体に近い、10人の死体。よく見ると顔をぐちゃぐちゃにされていたり、手足が切り落とされている死体がある。

「……やっぱり、鬼の殺し方は嫌だな」

苦しそうな顔で理央が言う。

「そうですね。助けられなくて本当にごめんなさい」

勇利はそう言い、申し訳なさそうな顔で死体を見つめた。

何かにハッとしたサスケは、人間の姿に戻り言う。

「まだ生きてる人間がいます。2人。でも呼吸がおかしい」

「一刻を争いますね。どっちですかサス……」

ドスッという足音が聞こえ、皆がそちらを向く。

血に塗れたミイラのような見た目の、女性の魔物が10人こちらに向かってきている。

「魔物……何故ここに」

「おそらく、この亡くなった10人。鬼に殺されたことによって、怨念を持ってなったんだと思う」

勇利の言葉に対し朝陽がそう言うと、勇利は少し考えてから言う。

「もしかして、腹を張り裂いた鬼は死んでる……。そうすると、3人を死なせてはいけません。高確率で魔物になる可能性があります」

「王子!ここは鈴歩に任せてっ! 華の血解放。彼岸花」

鈴歩は華の血の能力を使い、10人に分身して見せた。

「鈴歩、無理はしないように。お願いします。それでは皆さん、先を急ぎますよ」

鈴歩が短刀を2本取り出し戦闘を始めたと同時に、4人は急いで生きている人の元へと向かう。

まだ生きていた女生徒は、朝陽に嫌がらせをしていた2人だった。もう1人の嫌がらせをしていた女生徒は、既に死んでいた。

2人の腹は膨れ上がっていて今にもはち切れそうだ。

そしてそのうちの1人は、顔がぐちゃぐちゃになっていて、手足が切断されていて、ほぼ虫の息に近い。

「たす…けてっ、いたぃ、しにたくなぃっ、しにたくなぃ、やだぁ、たすけて、くるしいよぉ」

1人の女生徒は、必死に助けを求める。

それと同時に、今にも死にそうな女生徒がガクガクと震えだし、体を反らせたと同時に腹が破裂して血飛沫が舞う。

お腹には鬼の死骸がいた。女生徒も死んでしまっている。

「やだっ、えみっ、ああああ、やだ、しにたくなぃ、たすけてっ、たすけてっ」

「今助けます。サスケお願いします。私はあそこの魔物2体を倒します」

泣き叫ぶ女生徒に勇利はそう言い、サスケに注射器を渡してから、2体の魔物の方を見つめ、懐から銃を取り出す。

「承りました。失礼します」

サスケは女生徒のお腹に触れる。

「華の血解放。向日葵」

黄色い光が掌から伝わり、膨れ上がってしまっていたお腹が小さくなる。

「ほら、もう痛くないでしょう」

「う、ん……」

女生徒は気を失う。気を失ってしまった女生徒の腕に注射を刺してから、サスケは朝陽と理央を見つめる。

「見ててください、あれが華巻勇利です」

壁を上手く使い、軽やかに飛んだ勇利は、無駄のない動きでリボルバーを引いた。脳天直撃した2体の魔物は、バタりと倒れ塵となった。

「助けられなくてごめんなさい…」

小さな声で勇利はそう言い、皆の元へと戻ってくる。

「おそらく鬼が直ぐに来るかと。彼女を連れて朝陽さんと理央さんは、今すぐ逃げてください」

「逃がさないよ。特に朝陽はね」

「そうそう、俺たちが狙ってる餌だからね」

米田と丸内の声が聞こえ、その場が凍りつく。

声の方を向くと、2人が立っている。

丸内は気を失っている傷だらけの鈴歩の胸ぐらを掴んで持ち上げている。

「とりあえずフィオーレの連中を倒してからだね」

丸内は朝陽たちの方へと、鈴歩を思いっきり投げる。

「鈴歩っ!っ!!」

咄嗟にサスケが鈴歩を受け止めた。

「サスケ、いけますか」

「えぇ。朝陽さん、鈴歩を頼みます」

「はい」

朝陽に気を失っている鈴歩を任せ、サスケはシベリアンハスキーの姿に変わる。

米田と丸内は、人間姿から三メートル程の三つ目の鬼の姿に変化した。

「必ず護ります」

勇利は朝陽たちの方を向いて、微笑んだ。

朝陽は胸がぎゅっと締め付けられた。

勇利とサスケが鬼と戦闘をし始める。

目にも止まらぬ速さで軽やかに動き攻撃を仕掛けるが、鬼も上手でなかなか攻撃はあたらない。

「…っん、朝、ひちゃ?」

「鈴歩さん、動かないでください」

目を覚ました鈴歩が起き上がり、戦いに行こうとするのを止める。

「だめっ、鈴歩は、戦わなきゃ、鬼にたべられるの、痛いからっ、ほなみ痛かったから、あの鬼つよいからっ、2人じゃ、だめっ」

苦しそうにそう言う鈴歩。確かに2人を見ると、苦戦していて体力もどんどん失われている。

「なら、僕が行きます。ねぇ、鈴歩さん教えて。どうしたら、血の力を使えるの」

「え、訓練しないと、あと、戦えなきゃ…」

「僕の血、君たちのボスには内緒にしたけど。薔薇なんですよ」

「薔薇…!!」

驚いている鈴歩と不思議そうに話を聞く理央を気にせず、朝陽は続ける。

「血を使うに至って、大事な事だけでいい。教えて」

「うっ、ううっ、えっと、意思。助けたい、倒したい、いろんな感情っ、あとは戦闘技術」

「ありがとう、戦闘技術は自信ないな。理央、鈴歩さんを頼んだ」

「……わかった。よくわからないが、お前ならどうにかできる気がした」

「ありがとう。行ってくる」

そう言い朝陽は、鈴歩を理央に任せ、戦闘している鬼と2人の元へと向かう。

息切れする2人は、こちらに来る朝陽に驚く。

「朝陽さん、来ちゃダメですっ!」

「ワンッ、ワンワンッ!!!」

戦いながらも止めようと2人は声を上げたり、吠える。

「ほらっ、こっち向け。米田、丸内!!! 僕の体を食わしてやるっ!」

朝陽がそう言い、妖艶に微笑むと鬼の動きは止まり、朝陽の方を向く。

「ほら、早く来いよ」

朝陽は、首元の装飾をを少し緩め、首筋を見せる。

鬼たちはゴクリと唾を飲み、朝陽の方へと向かって来る。

「何してるんですか、逃げてっ!」

勇利が叫ぶ。朝陽は、勇利を見て微笑んで、口パクで大丈夫と伝えた。

「罠にかかったね。華の血解放、薔薇『魅惑』」

そう言い指をパチンと鳴らすと、鬼たちは止まり、そのまま自分の心臓辺りを手で刺し、心臓を握り潰して死んだ。

何が起こったか、わからない他のメンバーに朝陽は言った。

「僕の血は薔薇の魅惑。そして、祖母から譲り受けた祝福です。それと、僕決めました。貴方達を護りたい。そのために戦闘技術を身につけたい。だから理央と一緒に、フィオーレに入れて貰えませんか」

 


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