習作

望月ひろし

第1話

 ここはどこかと思った。

「これにて最後。今日の大目玉、まるで御伽の世界から飛び出して来たような美少女。年齢は18。天然の栗毛に真珠のように透き通った肌!」

 どこか広い場所だと声の響きから分かる。カーテンが目の前にあり真っ暗で何も見えない。

「それではご覧いただきましょう。カーテンオープン」

 その声と同時にパッと視界が開ける。何と金属製の檻の中にいた。

 大きなステージ。数えきれないほどの視線と響めきを感じる。

 改めて思う。ここはどこなんだろう。

「歓声ありがとうございます。これ以上はお客様のみが許されること。景気良くお願いしたします」

 マイクを持って大声を張り上げていたのは誰だっけ。場内の照明にまだ目が慣れず、声の主をはっきりと見ることができない。

 会場の熱気が上がったのは感じた。檻の中という状況に恐怖ですくみ上がってしまった。

「さて八千万から行きましょう。さて、誰かいないかぁ」

「八千百だ!」

 会場のどこかから声が上がった。

「八千百でました。他ないか? これが最後ですよ」

「八千五百」

「九千でどうだ」

 あちこちから声がして段々と数字が大きくなっていく。

「一億三千だしてやろう」

 静かなのに一際通る声で誰かが言った。男の人だとすぐに分かった。

「一億三千かかりました! 他ないか他ないかぁ。なければ一億三千で、こちらの御紳士が落札となります」

 会場はあっという間に静まり返ってしまった。

「それでは無いようですので、一億三千でこちらの御紳士に決定いたしました。本日は以上です。今回のご来場、誠にありがとうございました。次回がございましたら、その時もどうぞご贔屓に」

 目が慣れたころ、その時は全てが決した後だった。

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