あるんだよ…神様にだって【完】

御月

イケボのおじさん天界に立つ

第0話 おじさんは昭和レトロに包まれる

 ひっきりなしに鳴り止まぬ騒音……もとい電話の呼び出し音。


 いや、嘘です。正しくは、昭和レトロ風情漂う懐かしき黒電話なのですが。


「主任!? 物思いに浸っていないで、電話出てくださいよ!」


 背中に突き刺さった金切り声に「はぁ」と溜め息をつきつつ、視線を窓の外からオフィス内へと向けます。


「天界にて阿鼻叫喚とは……世も末ですね」


 思わず愚痴が溢れます。


 ここは天界の雑居ビルの片隅……の更に隅っこ。天井からぶら下がるプレートには【天界相談窓口】の文字……あ、クモの巣が張っているではありませんか。誰ですか、大掃除サボった人は。


「だから、いい加減電話に出ろっ!」


 騒がしい部下ですね……まぁ良いですけど。此処がそもそも喧しすぎますから。けたたましく鳴り止まぬ黒電話10台より……。


「彼女の怒鳴り声の方が、10倍優しく感じられるってものです」


 すっかり冷えきったマグカップに手をのばし、やはり冷えきって苦味増し増しのコーヒーを嚥下する。


「さて、どの電話から出るべきですかねぇ」


 ここは天界相談窓口コールセンター。様々な苦情を受け付け対処する重要な役割を担った課だそうです。

 スタッフ2名に対して、電話は10台……重要なんですよね、この課?

 そもそも、天界にありながら苦情が殺到しているこの状況が狂っている気もするのですが。


「あっ……10倍けたたましくて、10倍優しいでは、差し引きゼロではありませんか」

「いいから電話に出ろぉ!!」


 部下の筈の彼女の額に角が見えた気がするのは、いや、気のせいですよね。

 だって此処、天界ですから。



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