第24話 【中学生のタイ代表チーム結成】


 18人のタイ代表選手が決まった次の日に、ほとんどの子どもたちは地元へ帰ってしまった。次の週はチャイヤプーン県の子どもたちが帰り、代表選手になった報告と本格的に始まる合宿の準備だったのだろう。全員が揃っての練習ができたのは、5月28日(日)からであった。

 残っているわずかな選手たちには、希望に応じて100球の特打ちをさせたり、キャッチャー陣のスローイングのため盗塁をさせたり、週末はプールで思いきり泳がせてみたりと2週間は個別練習等に時間を割いた。

 全員が集っての久しぶりの練習試合は、日本人学校にお願いして実現した。先発メンバー1番ショート・ゲッター、2番セカンド・ロット、3番ピッチャー・ジー、4番ファースト・プラッ、5番サード・オーン、6番センター・ペーン、7番ライト・ヨー、8番キャッチャー・ポーン、9番レフト・ヌである。

 結果は4対2の惜敗であった。勝てた試合に勝てなかったこと、内容としてはチャンスに選手が単独で判断した盗塁死が2つ、得点できるチャンスに弱気になって残塁してしまうなど、攻撃面での課題に加え、キャッチャーの経験不足がはっきりした。

 第2試合は1年生が出てきたため大勝できたが、1試合目が本番に向けた反省材料となった。真は相手投手が、テンポよく投げ込んでくる姿にほれぼれしながら見ていた。やはり上位3チームとの対戦をどうするかについて真は一人考えた。このような試合運びだと間違いなくコテンパンにやられてしまう。

 残りの練習試合は、日本人有志チーム、タイナショナルチーム、スパーンブリー体育学校との3試合で仕上げなければならない。チャンスは確実にものにできること、ピンチは最小限に食い止めること、そのために練習は実践的な内容を充実させていくことを確認した。

 4月が過ぎたとは言えまだまだ暑い毎日。朝のトレーニング、そして9時からの練習は続いた。5月もタイでは「暑季」である。日中の暑さは尋常ではなかった。選手たちも相当つらかったと思う。真の疲労も限界を超えていたと思うが、心の中はさらに燃えていた。

 もう1つ前の練習試合で、スライディングができずにアウトになったことにも危機感を持ったので、毎日のようにスライディングを実践させた。選手たちからは足が痛いと少しずつ悲鳴が聞こえてきたが、真は選手たちの悲鳴に耳を貸さずに練習を続けさせた。

 実践を想定した練習に重きを置き取り組むのだが、陽気で優しい国民性だろうか、実践とはかけ離れたものになってしまい、本番の厳しさを考えると真はただひとり、ストレスは大きく積み重なっていった。

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