第4話 生存戦略

 私は高校受験をすることになって、彼女と同じ学校に通えたのは中学の3年間だけで終わってしまった。高校、大学に進学するにつれて、友人関係は大きく変わっていったけれど、ただ一人、彼女だけは違った。

 

 「学校が違っても、ずっと友達だから!」

 

 中学卒業の日、別れ際に交わしたその言葉通り、学校が違っても彼女はそれまでと変わらず連絡をくれていた。中学の頃と変わらず、彼女は私にとってこの世で一番の親友であり続けた。


 それから数年が経ち、私たちはいわゆる社会の荒波に揉まれるようになった。

 「世の中ってこんなに生きづらいものだったのかな……」

 「社会人って想像以上に過酷なんだね。私たちまだ新人だから、発言権もあってないようなものだし……」

 二人とも違う会社で働いていたが、どこの会社も似たり寄ったりらしい。

 

 「みっちゃん、私考えたんだけど『生存戦略』しよう。今の状況を打破するために、二人で知恵を出し合って戦うの!」

 何かを固く決意したように、彼女は力強く語り始めた。

 

 『生存戦略』……それは、彼女が好きな物語に出てくる言葉だった。戦いを強いられる環境下で、少女達が大切なものを守るために、強く生きようとする。確かに、今の私たちと状況は似ているのかもしれない。自分のメンタルを守るために、私たちは苦手な上司と戦わなければいけなかった。

 

 「私ね、少し前から朝活を始めていて、自己啓発本を読んでいるの。自分の心を守るための知識が欲しくて……だから、胸に刺さった言葉やお勧めの本があったら共有するね!」

 

 彼女は社会人になって、見違えるほど変わっていった。中学時代は、定期試験で追試組のメンバーに入れられるくらい勉強嫌いだったのに、それが今となっては朝活に読書だなんて……彼女には失礼だけど、内心かなり驚いた。いくら学生時代に努力から逃げてきたことを後悔しているとはいえ、これほどの自分改革を実現させてみせるなんて……。

 まるで『生存戦略』を掲げる物語の主人公のように、強く逞しく生きることを決心した彼女は、とても努力家で芯の強い素敵な女性に見えた。

 

 こうして、なんとか社会の荒波に耐えながら、二人ともそれぞれの仕事に慣れつつあった頃、うちの家庭では両親の離婚話が始まっていた。

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