第7話◇オークと魔王◇
数ヶ月かかって北の国へとやって来た。
これからちゃちゃっと用を済ませたとしても、往復で一年。
一年もあったら、我が子が大人と変わらなくなってしまう、と思ったがそれは
けれど一年、掛かっても一年半で帰るのを目標にしようか。
以前にここ、北の国で魔王軍を蹴散らした時に、人の良い騎士と知り合った。
上手く見つかると良いんだがな。
国の中を堂々とウロウロしてたら、割とすぐに向こうからやって来た。
豚ヅラ
◇◇◇◇◇
あんまり大っぴらに豚ヅラ晒すな、だとよ。
随分な言い草じゃあないか。
ま、勿論言いたくなる気持ちも分かるがな。
その騎士と酒でも飲みに行こうと思ったが、店は目立つからダメだと言うから、その騎士の自宅で飲んだ。
魔王が支配する『魔国』と最も近いのは、やはり、この北の国。
ここ北の国から更に北、『枯れた草原』を超えた先の、広大な『魔国の森』の中央に位置するらしい。
じゃあ、ま、ちょっと行ってくるか。
◇◇◇◇◇
おかしいな。
どうして魔国の連中、俺を襲うのだろうか?
俺は確か、
どちらかと言わなくても、俺は連中の仲間みたいなものではないのか?
枯れた草原の中頃からか、ひっきりなしに襲われるもんだから、既に二千頭くらいは魔物を殴り倒したんだが。
ようやく森に差し掛かった、恐らくは魔国の森であろう。
恐らくここでも襲われるだろう。
そろそろ強敵も現れるであろうし、いつまでも素手では厳しいかも知れない。
ならば、剣を振るのに邪魔な木を斬りながら進もうか。
帰り道に悩まなくて済むしな。
腰の剣を抜き、右、左、右、左……、と密集する木を斬りながら歩を進める。
右、左、右、左、右、左、右、左、右……
どれ位の間そうして進んだかな。
テンポ良くやっていたら、なんだか楽しくなって、無心でやり続けていたら、急に視界が大きく開けた。
そう言えば全く襲われなかったが、ようやく俺も魔物だと気がついたのか。
トロい奴らだな。
と、思ったんだがな。
森を抜け、僅かも行かぬ内に、大きな門と高い城壁に阻まれ、そして頭上から声が掛けられた。
敵である貴殿の入国を認められない、だとよ。
そうか、ようやく合点がいった。
きっと、以前に勇者と蹴散らした時に顔を覚えられたんだ。
細身のオークって珍しいもんな。
既に敵だと思われているなら、もう、しょうがないな。
押し通るだけだ。
門の正面に立ち、ふぅっ、と軽く息を吐いて剣を抜く。
門の中央で、縦に、上から下に振り抜いて、クルリと回して鞘に納める。
そして手で門を押す。
単純にデカいから重いが、扉の内側に掛かった
そうなんだよな。
前世で『剣王』とまで呼ばれた剣に加え、魔物の中でも力の強いオークの腕力、やっぱり反則かも知れないな、俺。
門を突破された事に気がついた魔物どもが殺到するが、峰を返した俺の剣が、それを弾き飛ばす。
俺の剣が片刃で良かったな、オマエら。
「悪い様にはせぬ。魔王の
◇◇◇◇◇
ま、それからも色々ややこしかったが、魔王軍四天王とかいう連中のうち三人をコテンパンにしてからは、割りとスムーズだったかな。
最後の四天王に案内されて、城下を行き、王城を目指している。
ふむ、思っていたのとは、違う。
北の国の騎士や、
城下のイメージは、そうだな、俺の村に雰囲気が似てる。
不潔でもない、殺伐としてもない、普通だ。
しかしだ。
魔王のイメージは、割りと合っていた。
グルルゥゥゥゥ、などと唸って
最後の四天王が慌てて、懐から何か、どうやら干し肉を魔王に与え、それをクチャクチャと咀嚼すると、魔王はあっという間に
最後の四天王に背を
「
「気にしなくて良い。病か?」
ゲホゲホと咳をしつつ、魔王は、病ではないんだが、と一言述べてから、滔々と話し始めた。
◇◇◇◇◇
魔王の話を聞いた。
結論から言う、この魔王は殺さない。
「魔王、これを喰え」
俺は自分の携行食を差し出した。
「干し肉か……、さっきのを見ただろう。儂はもう、
「勘違いするな。これは
「……なに!?」
俺の携行食、豚の干し肉をガツガツと食べた魔王は、吐き戻す事もなく、ついにようやく人心地ついた様だ。
「
「そうだろう。我が村の特産品だ」
俺の村の豚を褒められるのは、悪い気はしないな。
「ところでオマエさん、城下では大暴れだったそうだが、何の用だ? 儂の命か?」
「……用か。用なら済んだ」
「そうかよ。ならもう
「ああ、そうだな。だが魔王、お前も一緒に来い」
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