目覚めの声
これは何だ。
それは、そう思った。
突然上から落ちてきて、死んだのかと思えばしばらくして起き上がった何か。
雪がクッションになったとはいえ、随分高いところから落ちてきたらしくそのダメージは計り知れない。
見たことのない生き物だった。
それは、人間を知らなかった。
二足歩行で歩く変な生き物だ。
それはそう思った。
おかしな生き物は何事かつぶやくと、それたちが眠っている石に寄りかかって目を閉じてしまう。
死んだのか?
ぴくりともしない体に、そう思った。
だから、それはほんの少しの好奇心だったのだ。
自らが閉じこもっていた石を砕いて、ふるりと体を震わせる。
ゆっくり、ゆっくりと近づいて、においを嗅いでみた。
血のにおいが強すぎる。
顔をしかめたそれは、今度は鼻先で少し押す。
すると、おかしな生き物は簡単に下に転がった。
《う、うそでしょ。死んだ? 死んでる? 殺しちゃった?》
あまりにも簡単に力なく崩れたことに動揺して、それはオロオロと足踏みをするが、どうしたらいいのか見当もつかない。
「う………。」
《――――――!?》
かすかなうめき声を拾ったそれは、目にもとまらぬ早さで飛び退く。
未知なる存在を前に、それは完全に臆していた。
そんな様子を他の仲間たちに見られでもしたら一生笑いものにされるに違いないが、だが今は誰もいない。周りを一目して、ほっと息をつく。
よし、大丈夫。
誇り高き星竜がなんたる様よ。
もう一度気合いを入れ直して、再び近づく。
「う…さ、寒い………。」
《うへっ…!?》
よくわからない鳴き声を発して、身を震わせているのにようやく気がついた。
寒いのだ。
そう理解したそれは、そっと近づくとおかしな生き物を自身の毛皮で包んでうずくまった。
これで寒さはしのげるだろう。
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