唯と雫

二髪ハル

第1話

 なんも変わり場のしない春の日曜日。

「にゃ~」

 佐藤 唯。私の飼っている白い猫のかまくらが「外から帰ったにゃ~」と鳴き声を上げながら肩に頭突きをしてきた。

「んっ……」

 四月中間。春は来たとはいえ寒い……。

 かまくらも寒いのをわかっているようで私の布団中に潜り込もうと何度も頭突きをかましてくる。

「んっ……眠いのに」

 時間をみようとスマホに手を伸ばした瞬間。かまくらが布団の中に入りこんできた。

「あぁ、つめたい……」

 やっぱり外は冷えているようで毛のところがヒンヤリとしていた。

 ネコ湯たんぽにならないな……。

 ヒンヤリとしているかまくらをギュッと抱きしめ。スマホの画面を開き11時20分と表示していた。

「……まだ寝れる」

 何の用事もないからゆっくりとかまくらの体温を堪能しよう。

「ゆい~生きているか~」

 ……堪能する時間がなかった。

 下から幼馴染の声を聞いてしまい完全に目が冴えてしまった。

「ゆ~い~?」

 タンタンタンと階段を駆け上がる軽いステップを聞きドアを叩く音も聞こえてきた。

「唯っ。生きている?」

「死んでる……」

 かまくらの手を出して合図する。

「よし、遊べるね」

「私の話聞いてた……?」

「かまくらが遊べるって言ってたから何の問題もない。ねぇかまくら~」

 雫がかまくらの手を握り肉球を触っていた。

 ゴロゴロと喉を鳴らし。急に布団から飛び出していった。

「あぁ、行っちゃった」

 出ていったせいでかまくらのスペースが空き。冷え込む空気が出来上がって一気に寒気が全身に襲ってきた。

「おのれかまくら、呪ってやる……」

 出ていったかまくらに文句を言ってやらないと。そしてお腹を触ってやらないと私の気が収まらない。

「かまくらを呪っても仕方がないでしょ」

「いや、かまくらを触りにいかないと……」

 復讐ということで起き上がり。一階に下りていくとかまくらが鳴いていた。 

 元々かまくらは野生の猫で家の前に倒れこんでいるところを家で飼うことにした。 

「んっ外に出たいの?」

 お腹を触りながら聞くとニャーと返事をしてきた。

 家から出たいということで玄関をあけると勢いよく出ていき私は自分の部屋に戻ることにした。

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