『今日から悪魔の契約者!』(7)

真菜はコランと一緒に玄関から外に出た。

外の景色は、すっかり夕焼け色に染まっている。

真菜が、自分の家の右隣の部屋のドアを見て確認する。


「あ、本当だ……昨日まで空き部屋だったのに」


次に、ドアの横に掲げられている表札が目に入った。

そういえば、コランくんの名字って何だろう?と、真菜は気になって見た。

そこには、堂々とした字体で『魔王』の文字が書かれていた。


「え…魔王?魔王って、コランくんの名字なの?」

「うん!!父ちゃんの称号そのままだ!カッコいいだろ!」

「父ちゃん?父ちゃんって、まさか……」


魔王と聞いて思い付くのは、あの人しかいない。

担任教師であり、我らがしもべの主人である、魔王だ。


「うん!!オレの父ちゃん、魔王だぜ!!」


驚きよりも先に、やっぱり…と納得してしまう。

そう思ってしまうほどに、容姿がそっくりだ。

だがよく考えると、次々に疑問が思い浮かぶ。

コランの見た目は、真菜と同年代の15歳くらいだろう。


「ちょっと待って、魔王先生って20代くらいに見えるけど!?」

「父ちゃん、1万年以上は生きてると思うぜ」


そんな途方もない数字を言われても……。

なら、コランは本当は何歳なのだろうか?

悪魔に関しては、人間の常識で考えない方が良さそうだ。

それ以前に、担任の先生と生徒が親子ってアリなのだろうか。

どれだけ親バカな魔王なのだろうか。

コランが隣の部屋に引っ越してきたという事は、魔王も一緒に……。

真菜は急に落ち着かなくなってきた。


「魔王先生、家にいる?挨拶しないと…あ、貢ぎ物を用意しなきゃ」


すっかりしもべらしい真菜の発想に、コランは笑った。


「オレは一人暮らしするんだ。真菜と同じだ!」

「あ、そ、そうなの……」


ちょっと安心したような、複雑な心境の真菜であった。







とりあえず、怒涛の登校初日はこれで終わった。

魔王のしもべとして、悪魔の契約者として、最強の人間として。

一気に肩書きが増えてしまった『普通の少女』、真菜。

悪魔の学校での日々は、まだ始まったばかり。

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