第2話『今日から悪魔の契約者!』

『今日から悪魔の契約者!』(1)

真菜は自宅マンションに帰ると、制服から部屋着に着替える。

そして、自室のベッドに倒れ込んだ。


(こんな変な事になるなんて……)


確かに自分も、特殊な家庭の環境で育ってはきた。

両親に無理を言って、中学3年生からの一人暮らしを許してもらった。

今日から新たな学校生活が始まると思ったら……。


(お父さん、お母さん、どうしよう……)


中学・高校を卒業して立派な人間になると意気込んだのに、あの学校では立派な悪魔にされてしまう。

少なくとも、すでに魔王のしもべにはされてしまった。


真菜は起き上がると、床に詰んである新しい教科書の一冊を手に取る。

これらは事前に、学校側から自宅に届けられたのだ。

一見、普通の教科書のようだが、中を読んで確認すると唖然とした。

『歴史』の教科書は魔界の歴史について書かれているし、『生物』の教科書もそうだ。

魔界の生物、魔獣やら何やら物騒な生き物でページが埋め尽くされている。

『魔法』の教科書については、そもそも理解のしようがない。


(あれ?……でも、ちょっと面白いかも…?)


読み出してみると、ファンタジー小説や未知の生物の図鑑のようで、非現実感を味わえる。

これらを学んだ所で、人間として生きるのに役立つのかどうかは別として……。

そんな教科書の中に1冊だけ、謎の本が混ざっていた。

表紙に目の形のような紋章が描かれているだけの、真っ黒な本。

魔術書のようにも見える。開くと何かが起きそうで、ちょっと怖い。

恐る恐る本を開いてみると、中は全ページが白紙だった。


(え?真っ白……これ、ノートかな?)


その時、来客を知らせるインターホンが鳴った。

真菜が室内のインターホンから応答すると、スピーカーから声が聞こえてきた。


『あー!!真菜!!オレ!オレ!!』


何かの詐欺のように答える彼の声を忘れるはずもない。


(……なんで彼が、ここに!?)


真菜は急いで玄関に向かうと、鍵を開けてドアを開く。

すると目の前には、予想通りの『彼』が満面の笑顔で立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る