第百十九話 上手いラーメン、怪物出現

「いやぁ、美味しかったなぁ!」


シェダルはラーメンをたらふく平らげ、感想を述べた。


「お嬢ちゃん、良い食べっぷりだねぇ!」


 店主はその姿に感銘を受けたのか、笑顔でそう言った。

 確かに美味かった、長く続いているのもわかる気がする、また来ようかな。

 ……あれ?


「飯時なのに、客が少ないな」


 店に入った時は11時をちょうど過ぎたぐらいだった。

 その時は、「混んでない時でラッキー!」程度に思っていたが、食べ終わった今でも、客は俺たちだけだった。

 人気の老舗の筈なのに、何故だろうか?


「あぁ、そうなんだよ。ここんとこ、モンスター人間騒動で外出する人が少なくなってきてるみたいでねぇ、こっちも商売あがったりなんだよ」


「そうなんですか……」


「まぁ、君たちみたいに来てくれる人がいるだけで、俺は嬉しいけどな!」


 なるほど、確かにいつ誰がヒューモンスターになるか分からないからな、外出して面倒ごとに巻き込まれたくないんだろう。

 店主さんは、お客が1人いるだけでも嬉しいらしいが、飲食店的に、この事態はかなりまずいだろうな……。

 どうにかならないものか……俺らができることと言えば、ヒューモンスターを倒すことぐらいかな?


「ったく、それにしても四郎の奴、おせぇな……」


「どうかしたんですか?」


 店主さんは携帯を見ながら、誰かを待っているようだった。

 気になったので、聞いてしまった。


「あぁ、ウチのバイトがなかなか来なくてなぁ、いつもは開店5分前には来るはずなんだが……」


 サボりか? これが通常通りに混雑していたのなら、店にとってはいい迷惑だろう。

 ……だが、店主さんの言い方だと、いつもは普通に来ているのであろうか?

 そんな事を考えていると、ラーメン屋の天井に吊るしてあったテレビがバラエティ番組から突如、速報が入ったのか、キャスターの映像に切り替わった。


「なんだ? またモンスター人間か? 困っちまうなぁ……」


 店主さんは腕を組んでそう呟いた。

 そうとは限らないとは思ったが、確かにオークの時と似た光景だったので、俺も身構えてしまった。


『速報です! モンスター人間出現の情報が入ってきました、場所は……』


 ……どうやら店主さんの嫌な予感は当たってしまったらしい。

 場所はこの近くだった、早く行かないと!

 シェダルも真剣な表情になり、俺と顔が合った


「昇!」


「あぁ!」


 考えていることは一緒だった。

 シェダルが万札をカウンターに置き、俺たちは店を後にした。


「釣りは取っとけ!」


「ごちそうさまでした!」


「あ、おいちょっと! ……あれは!?」

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