第九十三話 私は科学者、申請してきた

「よし、安息の地に到着!」


「……」


 転移ホールで、例によって気持ち悪くなる俺。

 そろそろ慣れよう……。


「さぁて、あいつらはどこだ?」


「……知らねぇよ」


 グループには返信していなかったので、奴らがどこにいるのか、そもそもダンジョンに入っているのか、よくわからない。

 入ってないと良いな……と考えてしまうくらい、会いたくない。


「まぁいいか! 入っていたらそのうち会うだろう!」


「……なぁ、さっきあいつらに用があるとか言ってたけど、お前があいつらに何の用があるんだよ?」


「いやいや、こっちの話だ、気にするな」


「はぁ?」


 そんなこと言われると余計に気になるじゃねぇか。


「とりあえず、レベル上げ頑張るぞ! いやぁモンスター退治楽しみだな! 久々に私は戦うぞ! 昨日から暇で暇でしょうがなくて……」


「……」


 もう何も言いたくなかった。

 でもまぁ、俺もレベル上げしたかったし、いいか。

 そういえば今のレベルはどうなんだろう?


「ステータスオープン!」


 俺は携帯に向かって呪文を唱えた。


------


金剛 昇


NOBORU KONGO




国籍 日本国


スキル 鍵


レベル 50




在籍 県立祇園高等学校


所属 冒険者ギルド


------


 うお!? レベルが上がってる!? 確かこの間は35だったよな?

 ……というか、今更だけど、もう冒険者ギルド所属なんだ、秘密にしといてあげるとか春香さん言ってたけど携帯見ればバレバレじゃねぇか。


「ほほう、あのモンスター人間を倒したからかな?」



 シェダルは先ほどのように、携帯を覗き込んだ。

 ……そういえば。


「お前、携帯持ってないと不便だろ、というか携帯持ってないと行政とかから何か言われないか?」


 と言っても、そもそもシェダルはウトピア出現と同時に来たみたいだから事実上無国籍みたいなもんだし、病気とか患ったらどうするつもりだ?

 するとシェダルは、微笑みながらこう言った。


「ふふふ……私はこの腕輪の開発者だぞ?」


「そらわかってるよ、当たり前だろ?」


「携帯を作るなど容易いわ!」


 シェダルはどこからか携帯を取り出した……。

 形は俺の持っているものと同じものだった。


「いつの間に……?」


「いやはや、開発には結構手間取った、お前が寝てる間に携帯を分解したり……」


「おい!」


 俺の携帯分解したのかよ!?


「安心しろ! ちゃんと戻せてるだろ?」


「そうだけど……というか戸籍は?」


「あぁそこも大丈夫、もう申請した」


「いつ!?」


「お前と出会ってすぐ、地上に出た時だ、お前が学校に行ってる間に帰化申請してきた、ダメかと思ったが通ったよ」


「へ、へぇ~……」


 そんな早く国籍取れたっけ? まぁいいか。


「なんだその顔は? 流石に私も戸籍詐称なんて真似はしない」


「本当か?」


 今まで違法に第三階層に入ったり、公文書偽造を仄めかしてきた奴だ、簡単に信用できるわけがない。

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