第九十話 変な意地、君は凄い!
「例えばだ、お前じゃない誰かが身体能力と学力を世界最高にするスキルを手に入れたとしよう、そいつがその力を使って、学校でトップを搔っ攫ったらどう思う?」
「……うざいし腹が立つ」
「だろ? だがそいつがその力で悩める人を助けたり、人類の脅威に立ち向かったらどう思う?」
力で悩める人を助けるか……そりゃ……。
「……凄いと思う」
「それだ! お前は現状、腕輪の力をダンジョンでモンスターを倒して資源を供給しているし脅威を消している上にモンスター化した人間の成敗にも取り組んでいる、これは凄いことだぞ?」
俺が……凄い?
「だからそれはシェダルの……」
「私はただお前に力を与えただけだ」
「だからその力が……」
「力をどう使うかはそいつ次第だ、その腕輪を使えばどんな悪事にも使える、強盗でも無差別殺人でもなんでもな、だがお前はそういうのに使っていない、現状はな」
「……」
確かに、そんなことで使う気にはなれない、これは当然だ。
というか「現状」ってなんだよ、人聞き悪いな。
「いいか? 褒められたらすぐこう言うんだ、『ありがとう』ってな、そうすれば良い気分が無限に広がるぞ?」
「そうか?」
「あぁ、私もウトピアで無双してた時、腕輪の力で感謝されたら感謝で返した、そうやって伸し上がったんだ……まぁ結局ウトピアの上の連中に潰されたがな」
「……」
ありがとう、か。
確かに、あいつらに言えなかったな、でも……。
「俺はあいつらに酷いことを言ってしまった、お礼なんて言ったとこで……」
「なら、それを謝ればいいだろう」
「だからそれが……」
簡単な事じゃないんだよ、そう言おうと思ったが、シェダルは俺の発言を予知していたかのように切り返した。
「いつまでも変に意地を張っていると、永遠に引き摺って後悔するぞ? 伊達に150年生きてないからな私も、そうやって後悔したことが何度もある」
「……」
変な意地か、確かに張っていたのかな。
「というか、やっぱりあいつらと友達なんじゃないか」
「だから友達じゃないって」
「はいはい、さぁもう寝ろ、明日も学校だろ?」
「学校は休校になったよ」
「おっとそうだった、じゃあ明日はダンジョン探索しよう」
「担任が大人しくしてろって……」
「別に違法じゃないだろ?」
「そうだが……」
「さぁ、ほら」
「お、おい……」
シェダルが俺を強く抱きしめ始めた。
心臓の鼓動がより一層聞こえやすくなり、匂いもより一層深くなる。
「お、おい……やめろよ……」
「だからお前は私を襲う勇気なんてないだろ?」
「そんなこと言ってねぇだろ!」
「顔に書いてあるが?」
「ねぇよそんなこと……」
「ははは、また顔が真っ赤じゃないか」
「……」
こいつ……本当に……。
「さぁ、眠れ、もしも悪夢を見たら私が夢に入って戦ってやる」
「そんな……こと……」
「ふふふ……」
シェダルの催眠術にかかり、俺の目の前が、ぼやけ始め……気が付いたら暗闇の中にいた。
「お前は本当に面白い奴だ、立派に成長するまで、ずっと見守ってやるぞ、だから……たくさん悩め、たくさん経験しろ……おやすみ、昇」
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