第七十七話 俺ら同志! 話し合い!

 病院に着くや否や、俺たちは待機していた警察に連れていかれた。

 取り調べを受けることになり、事実だけを話した。


 議事堂前に現れたオークを連れ出して、人気のないところで戦ったこと。

 オークを倒したら、そいつが活動家の男だったこと。

 それ以外は何も知らない事。


 警察は奇怪なことを語る俺に対して、真摯に聞いてくれた。

 どうやら、機動隊の人や空き地の近くにいた人が証言をしてくれたらしい。

 ただし、俺の事を冒険者だと思い込んでいるらしい、登録した覚えはないんだがな。


 聴取を終え、シェダルと合流した。


「いやぁ、長い聴取だった……それにしても、冒険者有志って俺たちいつからそうなったんだ?」


「さぁな、私も同じことを言われた」


 どうやらシェダルも自分に対して冒険者と言われたらしい。


 誰がこんなことを……?

 すると、警察署の通路から、剣を持った騎士風の男性と弓を持つ女性が近づいてきた。

 2人の格好は小松と羽田がダンジョン探索で装備していた服装と似ていたが、奴らよりかは豪華な感じだった。

 というか、警察署の中で堂々と武器を持ち歩いているのは大丈夫なのか? その辺の法律はよくわからないけどさ。


「やぁ同志のお2人さん! お疲れ!」


 剣の男がまるで、同業者に労いの言葉を掛けるかの如く話しかけてきた。

 ん? 同志?


「こら! そんな馴れ馴れしくしないの! ごめんなさいね、馬鹿が調子乗っちゃって。」


「馬鹿とは何だ!」


 ……何だこの人たちは。


「あぁごめんごめん、突然すぎるよね」


 弓を装備している女性が、剣を装備している男性の口を抑える。

 この人たち……俺らと面識あったっけ?


「申し訳ございませんが、同志というのは何でしょう?」


 シェダルが丁寧に聞く。

 叔父さんに対してもそうだが、シェダルって150歳なのに、自分より身長が上の人には礼儀正しいよな。


「そうだ! お前らはあのモンスターを倒してくれたんだろう? 事情を聴いたときはびっくりしちまったよ! なかなか腕があるようだし、ここで提案があるんだ!」


「……突然で申し訳ないけど、貴方達には、仮という形ではあるけど、冒険者ギルドに入ってもらうわ」


「……は?」


 いやいやいや、なんで俺たちがあんな集団の一員に?

 俺そんなん嫌だよ、そもそも高校生だし、何であんな野蛮な奴らと同じ組織に?

 ……これを言ってしまうと大変失礼なので、丁重にお断りしよう、叔父さんも心配するし。


「申し訳ございませんが……」


「いいですね! 冒険者ギルド! 入ります!」


「おい!」


 ……つい、大声で突っ込んでしまった、周りの警官が俺たちを凝視している。

 するとシェダルは小声で俺に耳打ちする。


「……いいか? これはまたとないチャンスだぞ? この陰謀、もしかしたらウトピアとダンジョンの出現と何か関係があるかもしれん」


「……どうしてそう言い切れるんだよ!?」


「……あくまで予測だがな、この事件は、あの融合と同じく、突然起きているし尚且つ有り得ないことだ、確かに関連付けるのは少々早いかもしれないが、調査してみる価値はある」


「……そうかぁ?」


 確かにそうかもしれないけどさ、だからと言って冒険者ギルドになんか……。


「……いいじゃないか、ここは政府がバックについている冒険者たちの後ろ盾があった方がいい」


「……まぁ勝手に地上でモンスターを倒せば問題はある気もするけどさ」


「……それにだ、第三階層以降もこれで合法的に入れる!」


「……それが本音だろお前!」


「もしもーし! 話し合いは済んだかー?」


 騎士の男が小声で話し合っていた俺たちに乱入してきた。

 早く答えをはっきりしないと……

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