第七十話 倒れる怪獣! 謎のダンス!

『ふっふっふ……これで世界中を少女漫画にしてやる……』


「まずいじゃないか! どうするつもりだ!? なぁ昇!」


 怪人が高層ビル並に大きくなり始めた。

 シェダルは俺の肩を揺さぶり、高ぶる気持ちを抑えられないようだった。

 ……確かに、どうするつもりだろうか? ……CMを見るに、これは恐らく……。


『みんな! 恐電合体だ!』


「恐電合体!? それはなんだ!?」


 恐電合体、すなわち販促アイテムの一つである、恐竜たちのお出ましだ。

 赤い戦士が号令をかけると、空中に線路が現れ、電車の形をした恐竜たちが集まる。

 それらが合体を始め、電車から人の形へ変化する。


『完成! キョウリュウオー!』


 どうやらこの人型の姿はキョウリュウオーと言うらしい。

 電車と恐竜が上手くマッチしていて……結構かっこいい


「おぉ! すごいぞ! これで勝てる! 行け! キョウリュウオーとやら!」


 キョウリュウオーは少女漫画の怪人……この場合は怪獣か、怪獣に攻撃し始める。

 怪獣は怯み始めるも、少女漫画ビームで応戦する。

 これに当たれば先ほどの2人のように少女漫画になってしまう。

 またもピンチだが、ここで新たに線路が現れる。


『ここは拙者に任せよ! 恐電変形! プテラオージ!』


 金の戦士が乗るプテラノドンみたいな電車が人型に変形して、駆け付けた。

 侍のような姿をした、プテラオージなる巨人の応戦で怪獣は圧倒される


『今だ! キョウリュウオー必殺! ゴブゴブ切り!』


 キョウリュウオーが右手の剣を振り回し、怪獣を切り刻んだ。


『うわあああ! 紙はちゃんと再利用しようねええええええ! ぐわあああああああ!!』


 怪獣は謎の断末魔を叫んで爆発した。


「やったぞ! さすがキョウリュウオー!」


 ……なんでお前は「ずっと観てて応援してました」みたいな言い方するんだ。

 その後、大団円となり、右上に「CMの後はみんなでキョウリュウダンス!」という字幕が流れた。

 キョウリュウダンス……恐らくこのメンバーたちがEDに合わせて踊るのだろう、多分。


「キョウリュウダンス!? 踊るのか!? どこで!?」


「お前興奮しすぎだよ」


 シェダルは以前興奮し続けている。

 俺も確かに面白いとは思った、これは本当にすごい。


「興奮するだろうこれは! なんだ、この番組は!? これは本当に子どもに向けてやっているのか!?」


「多分だけど、子ども向けであって子ども騙しではないんだと思うよ」


 あくまで推測だが、こういう番組は観ている子どもたちが、大人になって見返すことも想定しているんだろう、もしくは一緒に観ていると推定される親御さんを飽きさせない為とか。


「早くキョウリュウダンスが観たいぞ! CMはまだ続くのか!?」


 俺も正直、なんなのか気になってきた。

 ……が、そのワクワクが突然崩れ去ることになるとは、この時は思ってもみなかった。

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