第二十三話 帰還する、歩き始める

 ダンジョン前

 ……生徒たちを乗せたバスは次々と発車していた。

 一部の教師は警察に引き継ぐために待機をした。


 しばらくして、バスは生徒たちの学び舎へと帰還した。

 教師に連れられ、各々教室へ戻り、帰りの支度を始める。


 そんな時、1年2組の教室


 その場にいない筈の、ある一人の生徒が、戸を開け、2組の生徒の前に現れたのだった。


「金剛……?」


「こ、金剛!?」


「金剛くん!?」


「……!?」


 1年2組、5班、ここに全員帰還したのだった。


◇ 


「うああああああああああ!?」


「よし! 到着したぞ!」


 目を開けると、俺は所謂、お姫様抱っこを「されていた」

 そう、俺がお姫様の方である。

 すごい気分が悪い……さっきはグロ耐性の無さで吐き気が出たが、今度はダンジョンに行くときのバスで催した、乗り物酔いと似たような吐き気が出てきた。

……というか乗り物酔いだわ、吐きそう。


「足元気をつけろよ」と言って、シェダルは足から俺を着地させた。


「さ、ご学友も心配しているだろうし、さっさと行って顔見せてこい!」


「……」


 心配、か。

 心配なんてものはせず、憎しみの感情を抱いているのではないだろうか?


「じゃあ私は安息の地に戻ってモンスターの死体処理をして、またここに戻ってくるからな!」


「あぁ……」


「どうした? もしかして、みんなに心配かけて不安か?」


「……」


 ある意味では当たっていて、ある意味では外れていた。

 そういう感情もあるが、もっと違う、別の感情があった。

 申し訳ないというか、怒りというか、自分でもわからなかった。


「まぁ、顔を見せれば何とでもなる! じゃあ私は行くからな! 頑張れよ!」


「お、おいちょっと!」


 待てよ! と言いたかったが、その前にシェダルは円を描いてワープをしていた。


「はぁ……」


 思わずため息が出る。

 戻りたくないなぁという気持ちと、心配かけて申し訳ないなぁという気持ち、そして「俺を無能扱いしやがってこの野郎」という怒りとも憎しみともいえる気持ち。

 トボトボと俺は教室に向かって歩いた。

 教師とすれ違ったら、きっと驚愕の声が出るだろう


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る