第十九話 スキル解放! うるさい音!

 シェダルは台車の下から、腕輪と謎の四角い箱(?)を取り出した。

 その腕輪は俺が今嵌めているものと同じ……

 というか、その箱は何なんだ?


「こいつは鍵スキルを持つ者だけが扱える代物……名前は……決まっていないが、なんでもいい! スキルチェンジャーとでも呼んでくれ!」


「いや、そのまんまじゃん……ていうか、これ返すよ、元はあんたの物なんだろ?」


「あぁいいよいいいよ、元々ここに来た最初の者に託すために置いたわけだし、君にあげるよ、その鍵もな」


「あ、ありがとう……ちょっと待て、ここに来た最初の者? つまり俺が来るまで誰もここに来なかったのか?」


「そういうことだな! おめでとう! 君は本当に素晴らしいな! 花丸をあげるよ」


「お、おう……で、これ一体何なの?」


 すると、「気になるか?」と言って、シェダルは立ち上がり、四角いケースから一つの鍵を取り出した。


「ふふふ……こいつはな、特定の鍵を指すことで、そのスキルの力を自在に使えるようになるという代物だ!」


「おお! ……え?」


 スキルの力を自在に? それって凄くね?


「例えばこの鍵を指してみよう」


 シェダルは持ち手に弓が描かれている鍵を自身の腕輪に嵌めた


『弓スキル!』


 音声が流れ、ダンスミュージックのような音楽が流れ始めた。

 俺のはロック調だったが、シェダルのはそういう感じなのか……。


「うお!? びっくりした……」


「いやはや、我ながら私の作曲センスは素晴らしい」


 お前が作曲したんかい、つまり俺の腕輪に流れたあの音楽もこいつが作曲したのか?


「そして鍵を回すと……」


『スキル解放!』


 シェダルの体に光が集まった。


「うお!? なんだなんだ!?」


『射抜きすぎる! 弓スキル』


「……は?」


 また変な音声が流れた。

 音声に気を取られていた俺だったが、「おい、よく見ろ!」というシェダルの声で我に返る。

 シェダルは先ほどまでのワンピース姿ではなく、中世ヨーロッパの弓使いのような、緑色の長袖長ズボン姿になっていた。

 そして片手には、いかにも重そうな弓を装備していて、肩に矢が入った筒をしょっていた。


「い、いつの間に!?」


「ふふふ、すごいだろう? これで私は弓スキルになった」


「そんな簡単にいくか?」


「じゃあ試しに、さっき抜き取った鍵を腕輪に嵌めて見ろ」


「これ?」


 先ほどは気を取られていてよく見なかったが、持ち手がどれも多種多様だった。

 試しに、持ち手に剣が描かれている鍵を嵌めてみた。


『剣スキル!』


「……」


 もうなんか、この音声慣れてきた。

 ロック調の音楽が流れ始める。

 あきれつつも、鍵を回してみる。


『スキル解放!』


 すると、俺の体が、先ほどのシェダルと同じように、光が集まり、覆いつくした。


『切り裂きすぎる! 剣スキル!』


 体を見ると、俺は黄金の甲冑に身を包み、右手に剣を装備していた。


「おおおおお!!」


「ほれ鏡だ」


 シェダルは手鏡を俺に差し出した。

 ……またも金髪になっていた。


「なぁ、なんで俺、服装と髪型が金色になるんだ?」


「金は美しいだろう?」


「……いや、これもう悪趣味の領域だよ」


「そうか? かっこいいと思うんだがなぁ」


「というか! この音声一体何なんだ? 凄すぎるとか切り裂きすぎるとか……あと鍵挿したときに流れるロックみたいな音楽と、ダンスミュージックみたいな音楽は何?」


「やかましい方が楽しいだろ、音声でも音楽でも、とにかく音を流してテンション上げなきゃやってられん、いわば……私の趣味だ! いいだろう?」


「はぁ!?」


「まぁまぁあれだ! 賭博の機械と同じ原理だ!」


「……?」


 そもそも賭博の機械の原理が分からないので何を言ってるのかさっぱり分からない。

 シェダルは鍵を外し、元のワンピース姿に戻る。

 それに釣られて、俺も外した。


「あぁそうだ、これも渡しておくよ」


 そう言って、シェダルは台車からもう一つ四角い箱と、ベルトを取り出した


「これは鍵をしまうケースと、ケースをひっかけるためのベルトだ! 鍵がいっぱいだと嵩張るだろうからね」


 よく見るとケースにはベルトに引っ掛けるようにフックが取り付けてあった、これは便利だ。


 試しにベルトを着けて、ケースを引っ掛ける。

 おぉ! なんかこれ、ショルダーバックみたいで便利だな!

 抜き取った鍵をケースに仕舞っておいた。


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