僕にもその笑顔見せてよ
ハル
第1話 信じている
あなたのおかげで私は前に進めた…
毎週水曜日、私は音楽室でピアノを弾く。
『音楽で気持ちが伝わる』
あの言葉を信じているから…
小学生になってすぐの頃、突然お家を出て行った母親を待つ私に父親はとても辛そうな顔をして…こう言った。
『戻って来ないよ…信じるな。
いいか?家族だろうが信頼しちゃだめだ。
もちろんお父さんのこともだ…』
なんで…お父さんがそんな顔するの?
この日から私の笑顔が消え喋らなくなった…。
それから、お父さんも帰って来なくなり私はお婆ちゃんと暮らし始め、学校にも行かず引きこもっていた。
お父さんがいなくなってから2年、心を閉ざした私にお婆ちゃんはこう言った。
「お父さんはそんなこと思ってない。お婆ちゃんはそう信じているさ。
今からでもお父さんのこと信じてみようと思っているなら、2階の一番奥の部屋菜穂にあげるよ」
「2階の1番奥?お父さんの部屋じゃ…いらない」
「お父さんから菜穂へのプレゼントがある。いつか会える日がきっと来るさ」
「いつか…」
お婆ちゃんがあの部屋をあげると言った日から1ヶ月が経った。
キーッ
「ピアノ…」
2階の1番奥の部屋。
そこには大きなピアノと1枚の楽譜があった。
確か、お父さんがよく弾いていた…。
お父さんの弾くピアノの音が好きだったのを思い出した。
『音楽で気持ちが伝わる』
お父さんがそう言っていたのを思い出す。
じゃあこのピアノは…
視界が滲んで大粒の涙が溢れ出した。
「私…ピアノ弾けないじゃん…お父さんの本音は…なんなの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます