03 沈黙の会話
「沈黙の会話」
「知らない…天井だ…」
目覚めたシュウはそう言った。
その直後、ドアから人が入ってきた。
黒髪の女が入ってきた。
女の手にはコップが乗ったお盆がある。
「あ…目覚めましたか…?」
「…えぇ、まぁ」
「お茶を淹れました…よろしかったら…飲んでください」
コップに入った黄色い液体を渡された。
ドロッとしたお茶だ。
ゴクッ……
お茶を吹き出しそうになった。
(クソマズッ…)
(ここは我慢だ…我慢…、精神統一だ…)
(ふぅ…)
気持ちをリセットする。
「あの…助けていただきありがとうございます。」
「あ…いいんです…人を助けるのも戦士の仕事ですし、こういうの一度…やってみたかった…です。」
「あの…名前は…?」
「あぁ…自己紹介してませんでした…か…私の名前はロムーリ=ダランシア…魔法使いで…戦士です…」
(魔法使い…?そんなのがいるのか…ああ、そんなことより書類作らなきゃ…………クッ…なぜこんな時にあんな会社のことを思い出すんだ…あの会社ぁ……ああ…体調が悪くなってくる気がする…)
「どうしました…?大丈夫ですか?……顔色が悪いようですし、寝ててください…」
ロムーリは心配してくれた。
優しいな、なんて思ってるうちに夢の中へと入っていった。
これがロムーリ=ダランシアとの出会いである。
____________________________________________
月日は流れ、6年後。
シュウは日本へと帰ってこれた。
「知らない…天井だ…」
目が覚めたシュウはそう言った。
その直後、扉から人が入ってきた。
黒髪の女だ。
女の手にはコップが乗ったお盆がある。
「あら、意識が。」
「……」
「お名前、わかりますか?ここがどこだか、わかりますか?」
「大丈夫です。俺は…皐月 秀で…ここは…」
「病院です。皐月さん、あなたは渋谷の路上で倒れていました。なので、救急車でここに搬送されたというわけです。」
「…わかりました。」
「お薬です。飲んで下さい。」
コップに入った数個の黄色い錠剤を渡された。
「あの…助けていただきありがとうございます。」
「あ、まぁ…はい…医療関係者として当然のことをしたまでです。」
慣れているかのような答え方である。
「お名前は…?」
「え?」
「ん?」
自分でも何言ったのか分からなかった。
看護師の顔の赤みが消えた。
目つきが変わる。
変態を見るような目だ。
(あれ?聞いちゃいけなかったかな?……あ、視界が…)
と思ってる間、意識は深い闇へと堕ちていった。
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______________ここは?
天井や壁、床など全面が黒に覆われた世界。
暗黒世界と言われたらまさにここだ。
辺りを見回す。
ある一点を見て気づいた。
人がいる。
白い布を纏っている。
股間や乳首を隠すかのように。
謎の人物…
そいつは老年男性といった感じで、一言で言うなら『神』そんな感じだ。
(こんにちは。)
そいつは突然話しかけてきた。
!?
(驚くのも無理がなかろう…思念をそのままお主の脳に伝達させておる。)
あなたは…誰ですか?
(ほぅ、見知らぬ人に話しかけられてるのに妙に落ち着いてるな。儂は□□□じゃ。)
名前に雑音が入った。
?もう一度?
(??□□□だ。)
また雑音が入る。
聞こえませんが…
(□□□)
またまた入った。
今の時点では聞こえないようだ。
もういいです。
で、そのテレパシー?みたいな…奴は?
(テレパシー…そんな言い方もするんだったな。端的に言うと、思念伝達術だよ。あんたの脳を読んで直接、神経に刺激を送っとる。)
思念伝達術…
神が使いそうなやつですね。
(ハッハッハッ、当たり前だろう。儂は……□□神だからな。)
雑音が入る。
はぁ…それであなたは私に何か用ですか?
(□□神はな…一言で言うならば全知全能の神じゃ。それはそれは昔から…)
何の用ですか?
(…わかったよ…)
(……転生ってわかるよな?)
語調が変わった。
ゴクッ…
…それがなにか?
確かめるように聞いた。
(貴様は魔界コーヴァから人界ヤーシュへと送られた。何者かの手によって…)
(勇者という存在は、何をせずとも世界に響き渡る。
その勇者が消えるということは、世界が不安定になるということだ。
さっきお前も経験したはずだ。
6年前のコーヴァとヤーシュでの出来事が似ていただろう。
このままだとコーヴァとヤーシュは同一化してどちらの存在も消えるぞ。
均衡を崩した世界はいとも簡単に消滅してしまう運命なのだ。
そのためには貴様をコーヴァに戻さねばならん。
儂はヤーシュの運命を操ることはできん…
私の忠告を聞け…!私の指示通りにすれば解決するはすだ…!
未来は、貴様の手にかかっている…頼んだ。)
そう言い残して、『神』と名乗る人物は消えていった。
…なんで俺は人界から魔界へ転生されんたんだ?
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チュンチュン…
鳥のさえずりが聴こえる。
朝だろうか…
視界に光が差し込み、目が覚める。
シュウこと皐月秀はアパートの一室にいた。
茶色いフローリングに淡いクリーム色の壁、斜め左にはキッチンが見える。
部屋は5畳…いや6畳あるかないかの広さで、キッチン部分が出っ張っているようだ。
白い扉があり、その奥には廊下、トイレ、玄関がある。
窓からは光を反射させ煌めいている木々が見える。
所謂、一般的なワンルームのアパートだ。
ここは…どこだ…?
寝ぼけた頭で記憶を引っ張りだす。
昨日は…渋谷にいたんだったか…
『神』とかいう奴と出会って、この世界と向こうの世界とが同一化してしまうから言う通りにしろとか…
夢か…?
なんて考えている束の間、ドアがガチャガチャと鳴る。
_____っ!泥棒か…?
秀は立ち上がってキッチンの隙間に隠れる。
息を潜めて…
しばらくして、ドアが開いた。人の気配がする。
あの白い扉が開き、人が入ってくる。
女性だった。
______っ!?
「あれっ?シュウくんは?」
黒髪の女はキョロキョロと見回す。
…不審者ではないな。
と思った束の間、見つかった。
「あっ、いたっ!」
この家は狭い。
すぐに見つかった。
…無念。
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