異世界から戻った社畜さんは今日も出社する。
Tendon06 / 天丼06
第零話 帰還
第零話「帰還」
社畜…
社畜とは、主に日本で、社員として勤めている会社に飼い慣らされ、自分の意思と良心を放棄し、サービス残業や転勤もいとわない奴隷と化した賃金労働者の状態を揶揄、あるいは自嘲する言葉である。
「会社+家畜」から来た造語かつ俗語で、「会社人間」や「企業戦士」などよりも、外部から馬鹿にされる意味合いを持つ。(Wikipediaより)
つまり、自らの身体を犠牲にしてまで経済に捧げる資本主義の鑑。
つまり、資本主義を影から支える、縁の下の力持ち。
つまり……元勇者…………?
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地球とは全く違う世界でのお話。
そこでは長年、オワリカ王国軍と魔王軍が戦っていた。
劣勢であった王国軍は、国民から選ばれた勇者団を結成することとなる。
勇者、回復術士、魔法使、剣士の4人からなる勇者団である。
結成した途端、勢力は逆転する。
そのまま『勇者シュウ』ら4人は魔王マオーリプスを倒してしまった。
シュウらの活躍により、オワリカ王国は暫くの平和を約束されることとなった。
そんなシュウらが王国に凱旋パレードをするという。
オワリカ王国中央区
中央広場
【オワリカで最も活気のあるこの広場は円形状になっており、中央にある噴水は王国随一の彫刻家達を集め、あの大魔神『ベルゼブブ』さえ驚いたとか。
中央広場からならどこからでも、あの偉大なるオワリカ王城を眺めることができ、噴水との掛け合わせは世界最高の景色である。
中央広場から伸びる通りは
・中央通り(王城から見て真っ直ぐ、関所への道)
・王城通り(王城の正門へ続く道)
・商業通り(この世界で最も盛んな商店街へと続く通り)
・森林通り(マッツレス大森林へと続く通り)
の4つがある。
どれも常に民衆がいて、賑わっている。
(ワッカーナー大辞典より引用)】
とのことだが、今日は違う。
4つの全ての通りは人は一切おらず、静寂が支配している。
それもそのはず、民衆は皆、勇者を見るために通りの終点、中央広場に集まっているのだ。
白い石畳の地面が見えないほど埋め尽くす観衆。
「勇者が来たぞ!」
その一言で観衆が一気に静まる。
馬の蹄の音、鎧の金属音、それらが広場を響かせる。
中央通りの奥から黒い人影が現れる。
思わず息を呑む迫力。
「勇者…魔王を倒してくれたあの勇者…シュウが…帰って来たぞ…!!」
観衆の一人が叫んだ。
途端、静まり返っていた広場が歓声につつまれる。
観衆はシュウ達が通るための道を作る。
4人の勇者団が広場に到達。
『勇者シュウ、回復術士ハミ、魔法使ガム、剣士ロム』
珍しい黒髪を持つシュウに、
長い金髪に豊かな胸を持つ美女ハミ=ロスベルや、
短い茶髪に逞しい筋肉を持つ男、ガム・ウェトリン、
これまた珍しい黒髪のロングヘアーに眼鏡を掛けた女、ロムーリ=ダランシア
4人はまっすぐ前を向いて歩いていた。
これまでの苦楽の道のりの回想だろうか…
それとも、これから先の苦難の未来を見ているのか…
4人は多くの民衆がいる中央広場を抜け、王城の中に入っていった。
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中央広場を抜け、王城通りをしばらく通ると巨大な門が見えてくる。
オワリカ王城の正門だ。
「…でかい」
とシュウ。
「でかいですわね…」
とハミ。
「…でかいな…」
とガム。
「魔王城よりでかい…」
とロムーリ。
4人は門のデカさに驚愕しながら、王城の玄関へと続く階段を登っていった。
登り切ると、誰かが近づいてきた。
「こんにちは」
その人物は深々と礼をして、
「勇者団の皆様ですね?」
というと、ハミが答える。
「ええ…そうですが…あなたは?」
「ああ…失礼…わたしの名前はクリアム。王国護衛団の団長を務めております」
この人、白髪、白髭、白服とホワイト3コンボを決めそうな人だ。
「王国護衛団…団長??」
【王国護衛団というのは、王族を護るための最後の砦となる精鋭部隊である。
王国の兵団から騎士団までの6万人から選ばれし優秀な者のみを集めた15人で構成されており、護衛団に入れた者の親族は末代まで優遇されるとまで云われている。
(ワッカーナー大辞典より)】
「どうぞ、こちらへ」
クリアムに引き連れられて、王城の玄関を抜けるとすぐにレンガ調な石造りの壁と人間の彫刻が目に入る。
床には真っ赤なカーペットが敷かれており、豪華だ。
「この玄関は世界一美しいと言われている玄関です。オワリカ王国や、その王族の権威の象徴となっております。」
クリアムの丁寧な説明を聞きつつ、どんどん奥へ進んでいく。
しばらく歩き、一軒家が入りそうな大きな茶色い扉を開けると見えてくるのは大廊下。
人が5人寝そべっても大丈夫そうな広い廊下や、金の額縁に入れられた絵画が壮美である。
「こちらの絵画らは、王国随一の絵師が精魂込めて描いたものです。王国の美しい景色が、うまく表現されております。」
そこを抜けるとやっと玉座に辿り着く。
「ここが王国の政治の中心部、国王がいらっしゃる『玉座』です。」
見渡す限りの白銀の世界。
雪のような大理石で出来た床が永遠に続いてるかのようだ。
玉座の中央、その天井にあるクォーツのシャンデリアや、美しい彫像品が並んである玉座と祭壇は、まさに世界一の国を表している。
中央に勇者団が、祭壇の上にある大きな赤い椅子には、
白髪が混じった茶髪に、豪華な王冠、ちょび髭、そしてなんか凄そうな衣服を身に纏う人物こと、
オワリカの君主______スーワ・シナ3世が座っている。
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(スーワ視点)
「此度の戦い、見事であったぞ、礼をやろう!」
スーワ3世は喜ぶ。
(お祖父様からの念願、私が叶えましたぞ…)
そう言ってスーワは後ろを振り返った。
そこには肖像画があった。
黄金の額縁に、30代くらいの髭を生やした若い男性が描かれている。
スーワの祖父_______サクーマ・シナ1世は、このオワリカ王国を建国した。
魔王軍によって荒れ果てていたこの地を立憲国家として治めたサクーマは、民衆からの支持も厚かった。
(民心を大切に、食を大事に、軍を肝要に)
そのモットーを基に(モットーだけに)政治が行われてきた。
しかしサクーマは、魔王軍との戦『シノ=ナワガの戦い』で討ち死にした…
だが、その遺志は固く受け継がれ、今もその通り国政が執り行われている_____
スーワは前に向き直し
「そうじゃの…褒美は何でも構わぬぞ。申し付けよ。」
改めてそう言った。
四人は顔を見合わせて、
「うーん…じゃあ…『禁断なる回復魔術書』を頂戴いたしますわ」
とハム。
「『禁断なる回復魔術書』か…禁書庫にあるんじゃないか??」
「不死鳥の羽根と、ユニコーンの尾はありますかね?」
とガム。
「不死鳥の羽根とユニコーンの尾か…保管庫にあるだろう…」
「褒美…ならば…聖剣ナノーガを…」
とロムーリ。
「『聖剣ナノーガ』か…熱耐性ブーストされてるが、いいか?」
「それで…シュウは?」
とシュウに問いただす。
「褒美か……」
(褒美とか言われても……やはりここは重要な、金と時間を選ぶべきか…悩むなぁ…名誉とかもいいかもしれない…この世界の生活にも慣れてきたし奥さんもそろそろ欲しいな…でも、ここはやっぱり…金と時間??権力も欲しいな…けど、魔力とかも使ってみたいし…いや…もうわからん!)
悩みに悩んだ末、シュウは『 名誉 』を選んだ。
→01「名誉」へ
悩みに悩んだ末、シュウは『 時間 』を選んだ。
→05「時間」へ
悩みに悩んだ末、シュウは『 お金 』を選んだ。
→06「お金」へ
悩みに悩んだ末、シュウは『 妻 』を選んだ。
→07 「妻」へ
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