XVI.一人で戦うことほど怖いことはない
最果ての森———
逢兎は一人でモンスターと戦っていた。一人で次から次に湧き出てくる大群を斬りつけたり、燃やしたり、痺れさせたりしている。
「いくら何でも多すぎじゃない?『
などとぼやきながらも逢兎は真剣に攻撃をしている。ほとんどのモンスターにダメージを与え、半数弱は確実に倒し切っている。
しかし、モンスターがどんどん強くなるうえに逢兎の体力も減って行くので、確実に倒し切れる数が減ってきつつある。
「こんな大量にどこから来てるんだ? 多分根本を潰さないと終わる気配がしないんだけど、て、行ってみないと分かんないか。道、開けて『
逢兎は一直線にモンスターを倒し、モンスターたちが湧いて出てくる方向、森のさらに深くに向かった。
最果ての草原———
「イリちゃん、これ以上
「ルナ姉ちゃん、、、良いんだね。じゃあ、半分の願い。『
イリは勢い良く殴り飛ばし、およそ視界に移るモンスターの半数近くを倒して前に突き進んだ。残ったモンスターもまばらに飛び散り、イリは近くを通るモンスターを倒しながら進んでいる。
「イリちゃんにこんな力があったなんて、少しくらい無理させても大丈夫ですよね、アイト…でも、こんなに散らされたら大変です! もう少し節度を持って戦ってほしいです!」
ルナはイリが散らしたモンスターを集めて倒すのに精いっぱいでイリを追いかけられる余裕はないようだ。
冒険者ギルド———
冒険者の緊急招集。それは、各地の冒険者ギルドが緊急時に、その地にいる冒険者に対して特例依頼を出すことである。また、この章週に逆らえば冒険者資格剥奪となる。
緊急招集には、Cランク以上任意招集・Cランク以上強制招集・Aランク以上強制招集・Sランク級緊急応援がある。
今回出されたのはCランク以上任意招集・Aランク以上強制招集である。Cランク以上任意招集は、Cランク以上の冒険者は依頼可決実行中・戦闘不能の重傷を除き冒険者ギルドに集まることを指す。Aランク以上強制招集は、Aランク以上の冒険者は戦闘可能な状態であれば冒険者ギルドに集まることを指す。
ただし、over Zランクの冒険者はこれら招集の参加は全て個人の自由とされている。なので基本的に参加する者はいない。そもそもover Zランクに上がるようなものは何かあれば応援を出すので強制させる必要がないとされている。
「おそらく皆わかっていると思うが、皆には先ほどの大震を起こした輩についてだ。先程の大震は作為的な揺れであることは明確だ。そこで、皆にはその揺れを引き起こしたものの討伐を依頼する。震源は草原方向だ。今回招集に集まった12名の冒険者に特例依頼を命じる! ギルド内の装備の使用は自由とする」
ロノスがそう言うと、集められた冒険者は装備を再確認し、冒険者ギルドから出て草原の方へ向かった。
最果ての森手前———
イリは一人で森のすぐ近くまで突き進んで戦っている。しかし、モンスターの数も増えていき、どんどん強くなってきている。森に入るどころか、むしろ後ろに戻されそうになる。しかし、イリはルナが後ろにいることをいいことに多少は倒し損ねても前線を下げようとはしない。
「ごめんルナ姉ちゃん、僕このままここにいるよ。アイト兄ちゃんが弱らせてくれてるんだ。回復される前にダメージ与えれば倒しやすくなるよね」
イリは逢兎の攻撃によって負傷の大きいモンスターから確実に倒していっている。その分ダメージの少ないモンスターはそのままルナの居る方へと行ってしまっている。
「アイト兄ちゃんごめん、
イリは先ほどまでよりも高速で高威力で広範囲を殴り続ける。全体に攻撃しているが、それでも突破していくモンスターもいる。だが、確実にその数は減っている。
突然、森からモンスターが出てこなくなった。
「アイト兄ちゃん、全部倒したのかな?」
イリが森に入ろうとした瞬間、森の至る所からモンスターが出てきた。さっきまでは列をなすように一ヶ所から出てきていたのがどこからも出てくる。
「こんなにいっぱい、僕一人じゃ…」
最果ての草原———
ルナはイリが倒し損ねていたモンスターを確実に倒しながらイリを追いかける。
「イリちゃん流石にこれは任せすぎです。ルナはそんなに攻撃力高くないんですからもう少し減らしておいてほしいですよ」
「じゃあ下がっておきな」
突然ルナの前に一人の男が現れたと思ったらその場にいたモンスターが全員ミンチになっている。
「あ、あなたは?」
ルナは助けてくれた男に聞いた。すると男は長く赤い髪をなびかせ振り返った。
「俺はラオ。こう見えてもSランク冒険者だ」
そう言ってラオは刀を鞘に納めた。ラオはルナの目を見つめて口を開いた。
「さっきの揺れは君か?」
「い、いえ、さっきのは」
「違うならいい。この先に原因があるんだな」
ラオはルナの言葉を遮るようにして森へ向かった。ルナもラオを追いかける。
「ラオさん一人で行っちゃったな」
「ラオさんだけで十分なんじゃないですか?」
「それだと私たちの報酬が無くなるんじゃ?」
「依頼の良いところだったのに最悪だ」
ラオに置いて行かれた他の冒険者たちは追いかけながらもそんな話をしている。
「てか、こんなに細切れにしちゃったら報酬貰えないんじゃ?」
地面に転がってるラオが倒したモンスターを見てみんな呆れている。
「それよりヤバいのはあれだろ」
一人の冒険者が迫ってくるモンスターの大群を指しながら言った。その瞬間全員が戦闘態勢を取った。
果最国-爆天州———
「ギルマス、ちょっとヤバいよ。Cランクは助けようがないくらいヤバいよ」
冒険者ギルドの屋根から草原を見ていたゾーノが入り口前にいるロノスに声をかける。ロノスはそれを聞いて屋根の上まで上がって来た。
「いったい何が…」
ロノスは言葉を失った。モンスターの大群もそうだが、森付近には巨大な竜が3体いたのだ。
「
「今すぐにでも行ってほしいものだがね」
「今行こうと全滅してから行こうと結果は変わらぬ。あいつらに
「加減すれば?」
「生き残ったモンスターがここまで飛んで来る。それでもいいなら今行ってやるよ」
「後にしてくれ」
ロノスは即答した。
最果ての森-深奥———
逢兎は森のさらに深く、までやって来た。地面に穴が開いておりそこからモンスターが続々と出てくる。
「見つけたぞ。『
逢兎は穴よりも一回り程直径の広い火炎放射で穴を塞ぐ。
出てくるモンスターもすぐに倒れれていく。そのまま突き進むものはさらに少数しかいなくなった。
しかし、突然地面が揺れ逢兎の炎も消えた。揺れでどんどん穴が広くなっていく。巨大隕石が起きたかのように見えるほど穴が大きくなるとそこから巨大な竜が5体出てきた。逢兎は両手で1体ずつ掴んだ。
「『
逢兎が2体を抑え込んでいる間に残りの3体は森の外に向かって移動を始めた。
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