X.冒険者ギルドで門後払いされたら、厄災がやって来た
逢兎達は冒険者ギルドに入った。すると、音がなくなった。周囲からの目線が強い。先の戦いが噂に為っていたのだ。
逢兎達は真直ぐ受付まで進んで行った。
「ようこそ、冒険者ギルドへ」
「冒険者になりたいんだけど」
逢兎は受付にいた青味掛かった黒髪の女性に言った。名札には、リーノと書かれていた。
「では“推薦証”を見せてください」
「推薦証? 何それ?」
逢兎はきょとんとした顔で聞いた。
「お師匠から貰っていないのですか?」
「師匠? 俺に師匠なんているの? 知らないよ?」
リーノは呆れたような困った表情を浮かべる。
「推薦証が無い者は冒険者にはなれないんです。そういう決まりですので」
「えー、冒険者倒したって実績じゃダメ?」
「ランクによりますね。それに、貴方が倒したという証明が出来なければ駄目ですよ」
リーノは呆れ果てたように言った。
「Aランクならさっき5人くらい
「Aランク⁈ それに、目撃者が居る上で…」
リーノは手元の資料をすごい勢いで確認する。ちゃんと見れているのか分からないくらいの速さだった。
「ダメだったら今此処にいる冒険者ボコってもいいよ? その方が証明できるでしょ?」
「いえ、結構です。お引き取り下さい」
リーノは手元の資料をパタリと畳んでそう言った。三人の表情が曇る。
「なんで?」
「戦教を受けていない者には冒険者証を発行してはならい規約ですので」
「そうですか! だったらいいよ。冒険者の依頼勝手にやるから」
「冒険者でない者には報酬は出ませんよ」
逢兎は依頼の一覧を凝視する。
「依頼が無くなるのが先か、俺が諦めるのが先か、どっちだろうね」
逢兎はそう言うと歩きだした。
「あ、そうだ。ここに来るまでの一本道に転がってる死体も早く片しちゃってよ。子供が見たら泣くよ? てか、泣いてたし」
そう言って逢兎は外に飛び出した。リーノは慌てて外の様子を確認しに行った。
「依頼を受けると言っても、ルナたち何も見ていませんよ」
「それならさっき確認したときに保存したよ。これが一覧だよ」
逢兎は掲示板のコピーを紙として出した。
「どれがいい?」
「んー、これがいい!」
イリが指さしたのは『
「ダンジョンか。いいな、ルナはどれがいいとかある?」
「ルナは何でもいいですよ」
「じゃあダンジョンで決まりだな。あのでっかい建物かな?」
街のはずれにすごく大きなドームの様な円柱状の様な建物があった。三人はひとまずそこに向かって歩き出した。
リーノは逢兎が言っていた道を走っている。
逢兎が言っていた通りに無残な死体が転がっている。
「噓でしょ。これをあの少年が一人でやってのけたというの?」
「信じられないと思うけど本当だよ」「逃げ足が
見ていた街の人たちが口々に愚痴を開ける。ボソボソとした声が少しの間響き渡った。
「あの
「信じられなくても事実だよ」「Aランクが聞いて
「そんなはずありません。ここにいる皆さんはたしかに強かった。危険な依頼も数多くこなされてきた優秀な方々です。
リーノは冒険者ギルドに戻った。
逢兎達は目指していた大きな建物の元までやって来た。
「冒険者ギルドカードを見せてください」
逢兎達が建物に入ろうとしたら好青年が入り口でそう言った。
「なんで?」
「ここは
「そっか、じゃあ入るね」
逢兎は聞く耳持たずに入ろうとした。すると、兵隊に槍を向けられた。
「止まれ。しっかりと受付してから入れ」
「受付も何もすることないじゃん。俺たち冒険者ギルドカード?っての持って無いんだし」
逢兎はキッパリと言い放った。
「冒険者でない方はここでお引き取り下さい。ここから先は危険が多いですので」
逢兎達は摘まみ出された。
「ケチ! 入るくらい別にいいじゃん!」
逢兎がそう言っても誰も返事しない。それどころか冷酷な眼差しが増えた。
「アイトさん、取り敢えずここは一旦辞めておきましょう」
「そうだよ。無理してはいらなくてもいいじゃん。ここがダンジョンだって分かったんだから。冒険者になってからでもいいじゃん」
三人は少し移動して他の依頼を探す。
「簡単そうなのはこの辺りですかね?」
ルナが指したのは薬草採取や低ランクモンスターの討伐だった。
「いいじゃん。適当にブラブラしとけばクリアできそうなやつじゃない?」
「でもこれあまり聞かない物ばっかりだよ」
「そうですね。どれもあまり聞いたことが無い物ばかりです」
三人は少し悩んで結論付けた。
「よし、じゃあ適当に
「そうですね」「決まり!」
三人は街の外に出た。当然のごとく逢兎は知らない道に入ろうとしたのを二人
「この草原ってあんまり魔物居ないよね」
「確かにそうですよね。少し移動しますか」
「あ!、なんか向こうから嫌な予感がする」
イリが急に指さしながら叫んだ。二人もイリが指さした方向を見る。
「確かに嫌な感じがしますね」
ルナも険しい表情を浮かべながらそう言った。
「え? 嘘でしょ? 俺だけ?何も感じないのって」
「「……」」
二人は何も言わずに息を飲む。
「俺になくて二人にあるのって、あ!『危機察知』のスキルか」
逢兎がそう言うと途端に逢兎も嫌な気配を感じた。危機察知が危険信号を出しているのだ。
「これ大丈夫なの? 危機察知って自分が危ないときに反応するスキルだよね?」
「向こうに行ったら多分死にますよ」
「あっちに行くは嫌だよ」
イリもルナも恐怖の顔に染まっている。逢兎も手足が震えている。
「いや、逃げてもダメだよ。どんどん近づいて来る。倒すしかないと思うよ」
「嫌だ! 死にたくないよ!」
「本当に近づいてきているのなら逃げるしか…」
イリもルナも手足に力が入らなくなって来た。逢兎は杖を構えている。本当に戦うつもりのようだ。
「3、、、2、、、1、、、」
逢兎のカウントが終わると同時に閃光が走った。次の瞬間、
「グハ、、、」
逢兎は脇腹を深く斬られており、倒れてしまった。
「アイトさん!」「アイト兄ちゃん!」
ルナとイリが駆け寄る。
「大丈夫だ。これくらい『再生』でき、、グハ」
逢兎は少し血を吐きながらも立ち上がる。イリは傷口に手を当てて補助をしている。
「精霊魔法『
ルナは逢兎に回復魔法をかける。
「二人とも下がって!!」
逢兎は二人を遠ざけた。途端に逢兎の腹部に巨大な樹木の様なものが貫通した。
「ルナの魔法に似てるな。魔力が吸われてるのか。仕方ない、『
逢兎は自身に貫通している樹木の様なものを斬った。すると、樹木の様なものは消えた。
「『
ルナの回復魔法も相まって穴は直ぐに塞がった。しかし、体内の血管の再生はまだ不完全な状態だ。出血は無くなったが止血がまだできていない。
「見えない敵って想像以上に怖いね」
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