III.自分で貰った能力なのに、何も分からない能力だった
逢兎はイリを連れて森の中を
「腹減ってない? 喉乾いたりしてないよね? さっき川の水飲んだけど
「えっと、何から答えればいいですか? まず、暗い所は大丈夫ですよ」
イリは困惑したような表情をしている。一度に幾つも質問された上に、全部疑問符がついていた。何が聞かれているのか分かっていないようだ。
「あとは、川に戻りたいんですか? 戻れるんですか? 自分が来た道もわかっていなかったようですが?」
「あー、無理だね。イリは川の場所知らない? 水がないと死んじゃうじゃん。いや、俺が死にたくないって言ったところで死ななくなるわけじゃないんだけどね? てか、俺自分の鑑定してないじゃん。そもそも出来るかどうか知らないけど。てか、鑑定で本当にあってるのかな? わかんないけどそんな感じのやつ!」
逢兎は最後の一言は妙に力を入れて言った。
玆先逢兎 人間 魔法使い
称号:
スキル:
魔法:
耐性:各種属性攻撃耐性S 物理攻撃耐性S 魔導攻撃耐性S
「うぉ、見れた。てか、何だ?このステータス、『
「マジか? チートじゃん。いや、この能力って、俺があの
「アイト兄ちゃん? さっきから一人で何言ってるの?」
また逢兎は考えが口に出ていた。自分でもどうにかしないといけないのは思っているようだ。
「何でもない。それより、お前も鑑定してみるか。『鑑定』」
イリ・レノージュ 獣人 武闘家?
称号:奴隷気質
スキル:危機察知B
魔法:土魔法D 風魔法D
耐性:屈辱耐性A 恐怖耐性E
イリのステータスを見た逢兎は驚きのあまり口が開いた。
「―――イリ、お前、誰かにそのステータス見せたことあるか?」
「え? ステータス? それなら僕の村の人たちみんな知ってるよ。僕の事『奴隷娘』って呼ぶんだ。僕、奴隷なの? 奴隷だからこんな所まで連れてこられたの?」
「イリが何でここにいるのかなんて俺は知らん。でも、『奴隷気質』か」
奴隷気質:
逢兎はイリの顔を見ながら考えこむ。一言も発することなく。
「イリ、お前は強くなりたいか?」
「え……?」
イリは困ったような表情をした。
「ま、まあ、一人で戦えるようになれたらいいなとは思ったことあるけど...そんな力僕にはないし……」
イリは
「そっか。お前が俺を
逢兎が言うと、イリはさらに難しい顔をした。険しい顔で、真剣に考えている。
「奴隷...僕、アイト兄ちゃんと離れ離れになりたくないよ!」
そう言いながらイリは逢兎に抱き着く。円(つぶ)らな瞳で、
「安心しろ。俺の奴隷になる感じだ。まあ、奴隷の関係を使うだけで、実際に奴隷になるわけじゃないけど、どうする? いやなら他の方法考えるけど」
「僕が、アイト兄ちゃんの、奴隷になるの?」
「そうだな。まあ、そんなすぐにできるようなことじゃないだろうけど」
「大丈夫! 僕、アイト兄ちゃんの奴隷になる!」
イリは目から少し涙が溢れ出かけている。
そんな顔なのに、すごく可愛らしい笑顔をしている。
「そうか。まあ、とりあえず今日はもう遅いし、寝ようか」
そう言って逢兎は、寝袋とテントを作り出した。
翌朝、イリが起きると、逢兎は既に起きていた。外で謎の模様を描いていた。魔法陣だ。
「お、イリか。ちょうど起きたのか」
「ん? お兄ちゃんどうしたの?」
「取り
イリは逢兎に言われるが
「引き金、カノ者の信頼。術容、奴隷締結。
逢兎がそう言うと、魔法陣が輝きだし、魔法陣はイリの手の甲へと収まった。
手の甲に着いた魔法陣は、着いてすぐは白かったが、直(す)ぐに赤く変色した。
「アイト兄ちゃん、もう動いていい?」
「あ、ああ。好きにしていいぞ…」
逢兎は少し動揺していた。
魔法陣が赤くなるのは条件を満たしたときのみ。つまり、イリは逢兎に完全な信用を置き、主の器としての条件が満たされていたということだ。
「おいイリ! お前どこ行くんだ⁉」
イリは森の中に向かって歩いていた。
「顔洗うの。こっちに奇麗な川があるから」
そう言ってイリは歩き進めた。
逢兎はイリに付いて行った。一人だと迷子になるからだろう。
川で洗顔してるイリの横で逢兎は水を汲んでいた。
「アイト兄ちゃん、戻ろう。片付けないといけないでしょ?」
「そうだな。テントも片付けないといけないしな。ちゃんと道案内してくれよ」
「もー、アイト兄ちゃんは本当に道知らないんだね」
「
逢兎はイリにテントまで案内してもらった。適当に小袋にしまって二人は森の中を
二人で森の出口を探していると、何処からかゴブリンが出てきた。
「キャァァァーーーーー!!!!」
イリは発狂しながらダッシュで逃げた。逢兎はイリを追う前にイリを見失ってしまった。
「あんなに逃げ足早いのに、昨日の奴からは逃げられなかったのか? そんな事よりも、リアルゴブさんじゃん。肌が緑かかっていて、鬼と豚の顔面を足して5で割ってブルドッグを少し加えて不細工加工した感じじゃん!」
逢兎は目を輝かせながらゴブリンを観察している。こん棒で殴られそうになりながら。余裕で
「見れば見るほど飽きるな。多分これ以上みてたらは居ちゃうと思うし殺すね。んー、行け!ファイヤーボール!」
逢兎は杖の頭をゴブリンに向けて叫んだ。逢兎の頭くらいの大きさの火球がゴブリンを焼き払った。
「オロロロロロロロロ……」
逢兎は吐いた。真っ黒に焦げたゴブリンを見て。着ていた衣類がなくなり、巨大な
「ゲホゲホ…こういうのって消えてなくなるもんじゃねえの? 何で黒焦げで残ってんだよ。しかも全く形崩れずに!」
逢兎はその場を離れることにした。見ても気分が悪い上に、悪臭がするのだ。
「イリー、何処だー。戻って来ーい」
逢兎は森中に響き渡るほどの大声で探し回る。
「アイト兄ちゃん! なんでこっちに行くの? 私向こうに行ったよね? なんで反対方向に言っちゃうの?」
適当にゴブリンの焼死体から逃げたのが、イリが走り出した方の逆方向だったようだ。逢兎はイリが何を言いたいのか理解できなかった。
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