第77話『昭和の個人情報』

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記


077『昭和の個人情報』   





 昭和の学校に個人情報の概念は無い。


 控え目に言っても、その概念は低い。メッチャ低い。


 令和がスカイツリーだとしたら、家の屋根に載ってるテレビアンテナかというくらいに低い!



 学校には緊急連絡網というものがある。一番上に藤田先生(担任)の住所と電話番号があって、そこから下に二本の矢印。一つが委員長の高峰君、もう一つが副委員長のたみ子。

 二人のところからさらに、それぞれ三つの矢印が伸びて、矢印の下には七人か八人の名前があって、順番に矢印で繋がってる。むろん、それぞれに住所と電話番号が付いている。


 そして、イザという時には藤田先生が高峰君とたみ子に電話して、あとは伝言ゲーム式に緊急連絡ができるという仕組みになっている。


 この個人情報野ざらしの極めつけは卒業アルバム。巻末にはダメ押しに住所と電話番号と進路先(進学先とか就職先とか浪人中とか)が印刷されている!


 一学期の全校集会で『不幸の手紙』の被害が出てると生活指導の若杉先生が注意してたけど(028『臨時の全校集会』)、そもそもの元凶は、この個人情報の扱い方だと思う。


 でもね、あたしは令和からの越境入学なんで、不要な自己主張やら意見表明はやらない。


「まあ、実際に使われることは無いと思いますよ」


 情報屋のロコも平気で住所録の調査書に書いてたしね。


 お祖母ちゃんからも、あらかじめ言われていた。


「住所は昭和でも令和でもいっしょだし、電話はね……これ書いとけばいいよ」


「え、うちに固定電話は無いでしょ?」


 お祖母ちゃんが示してくれたのは局番から、うちの町の固定電話だと分かる。


「昔使ってた番号」


「昔の番号なんて、どうすんの?」


「これでかけてみて」


 お祖母ちゃんは自分のスマホを差し出した。


 で、かけてみると、わたしのスマホが鳴った。


「まあ、かかってくることなんてめったにないし。友だちからかかってくるとしても、夜中か休日。それも毎日登校してりゃあ、学校にいる時に済ましちゃうから、問題ないよ」


「あ、そうなんだ(^_^;)」


 気楽に納得して九カ月。緊急連絡網も住所録も活用されることは一度も無かった。


 しかし、明日は節分「今年の恵方巻はどこで買おうかなあ……」とお茶をすすりながらお祖母ちゃんが呟いた時にスマホが鳴った。


 


☆彡 主な登場人物


時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生

時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート

辻本 たみ子            1年5組 副委員長

高峰 秀夫             1年5組 委員長

吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部

横田 真知子            1年5組 リベラル系女子

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

藤田 勲              1年5組の担任

先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        

その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部)

灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

  

 

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