第55話『令和は暑いので昭和の文化祭に来るお祖母ちゃん』

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記


055『令和は暑いので昭和の文化祭に来るお祖母ちゃん』   





 令和5年の宮之森は連日最高気温が30度を超えて、昨日なんか34度!



 暑い暑いとボヤいてるのはお祖母ちゃん。


 元魔法少女だから、少々暑かったり寒かったりはヘッチャラなんだけど、再任用も終わって医療費が3割負担から2割負担に変わるのと同時に暑いの寒いのって文句を言うようになった。


 マイナンバーカードの年齢は70歳だから、当然なんだけど、この年齢は嘘八百。


 魔法少女はエルフと同じくらいに長生きで歳を取らない。実年齢はわたしも知らない。


 でも、日常生活を送るためには、マイナンバーカードに相応しい生活を送らなきゃいけないので、まあ、ブッテるわけですよ。




「あ、そういや、今日は文化祭だったね?」




 朝ごはんの食器をかたしていると、後ろからお祖母ちゃん。


「うん、そうだよ」


「ちょっと見に行こうかなあ?」


「いいけどぉ、あんまり目立たないでよね」


「うんうん、だいじょうぶ。メグリは合唱コンクールだったよね」


「あ、うん。うちは10時から」


「そうか、じゃあ、時間を見ていくね」


「うん、目立つことはしないでね」


「分かってるわよ」


 大丈夫かなあと思いつつ、家を出る。


 まだ7時半だというのに微妙に暑い。28度くらいはいってるんだろうなあ。


 戻り橋を渡って昭和45年に踏み込むと、あきらかに3度くらいは気温が低い。


 お祖母ちゃんでなくても、こっちに来たくなるよね。




 合唱コンクールは朝の二番、一番はフォークソング同好会。


 同好会なんで、おいしい時間は取れないんだけど人気がある。生徒会も、そのへんの使い方は上手い。


 フォークソング同好会で人を入れて、そのまま合唱コンクールに持っていく。


 合唱コンクールだけじゃ、インパクト無くってお客さんが集まらないからね。


「わ、きれいな人が来てますぅ!」


 上手のソデで前のクラスが終わるのを待っていて、ロコが、こっそり幕の隙間から覗いて観客席の美人さんを発見。


 え、どれどれ!?


 こういう時って高揚してるから、日ごろは冷静な真知子やたみ子まで覗きだす。


―― ゲ、お祖母ちゃん!――


 こないだ来た時は母親ってコンセプトだったけど、今日は、この一月に成人式でしたって感じのオネエサン。


 ベルボトムのジーパンに黒髪のロン毛のオデコにはトンボ眼鏡のグラサンですよ。


 決めた、知らんぷりしてよ!




 黒ネコのタンゴ~タンゴ~ネコの目のょうに気まぐれよ♪ ニャ~~(^>ω<^)!


 


 早川さんの指導もバッチリ実を結んで、バラバラの中にも統一感があって、客席からは結構な反応をいただく(^_^;)。


「いやあ、メグちゃん、よかったよ~(^▽^)!」


 ゾロゾロ下手の退場口から出ると、若作りが目をへの字にしてピョンピョン跳ねている。


「え、メグッチのお姉さん!?」「メグリ姉!?」「ええ!」「キレイ!」「おお!」「キャー」「うわあ!」


 こいつ、ぜったい狙って、ここに立ってるよ(-_-;)!


「まあ、みなさん、とっても素敵でした。ニャンコの決めポーズも可愛かったぁ!」


 あ、どーも(;'∀') ありがとうございます(^◇^)


「メグリの姉です、不調法な妹ですけど、よろしくお願いしますねぇ(*ฅ́˘ฅ̀*)」


 もう「クソババア!」と罵るわけにもいかず、俯いてばかりのわたし。


「じゃ、メグちゃん、お姉ちゃん昼休にぃ学食で待ってるねえ(*ฅ́˘ฅ̀*)」


 グヌヌヌ……(-_-;)




「ねえねえねえ、お姉さん、名前なんていうの?」


 佳奈子に聞かれた時は、ほんとどうしようかと思った。


「……名前を言うと祟られる」


 いっしゅん「え?」って顔になるんだけど、みんなギャグだと思って笑ってくれたんで助かった。




 昼は、いやいやながら学食へ、みんなも付いて来て、お祖母ちゃんはみんなに文化祭特別ランチを奢ってやって、さらに人気者に。


「お昼の一番は4組の『ロミオとジュリエット』ですぅ!」


 ロコが余計なことを言って、ブリッコばばあは「あ、見たい見たい(^▽^)/」とノッテくる。




 その4組の幕開き前にお祖母ちゃんの様子がおかしくなった。




 芝居そのものは、ロミオがセミプロの滝沢君、ジュリエットが教師団最年少の花園先生なので、前評判も十分。


 幕が上がる前から、客席は満杯、校長先生やPTA会長まで見に来ていて、期待のざわめきに満ちていた。


 そんな中、お祖母ちゃんひとり、顔つきが厳しくなっていく。


「どうかした?」


「メグリ、ジュリエットは元々は栗原って女生徒がやることになっていたんだろ?」


「え、なんで……」


 知ってるんだ?


「思念が、ここまで響いてくる……」


「え、なに?」


「栗原さんのご両親がギャラリーにいる」


「え?」


 首を巡らせると、二階のギャラリーに中年のご夫婦。そして、女の人、お母さんの膝には額に入った栗原さんの写真が載っていた……。





☆彡 主な登場人物


時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生

時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート

辻本 たみ子            1年5組 副委員長

高峰 秀夫             1年5組 委員長

吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部

横田 真知子            1年5組 リベラル系女子

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

藤田 勲              1年5組の担任

先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組)

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