第54話『隣は「ロミオとジュリエット」』

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記


054『隣は「ロミオとジュリエット」』   






 君の行く道は~ 果てしなく遠~い(^_^;)♪



 自主的に居残って『若者たち』の練習をしている。


 ほら、文化祭の取り組み、合唱コンクールに参加でしょ。


 舞台に立ってみんなで合唱しておしまいかと思ったら、熱の入り方がちがう。


「~さん ~さん ~くん、ちょっとだけ残ってくれる?」


 指揮をかって出た早川さんが5人を指名、で、その中に「時任さん」も入っていたわけ(^_^;)。




「加藤君、インターナショナルじゃないんだから、そんなに力まないでくれるぅ」


「え、あ、うん(;'∀')」


 10円男は「~歯を食いしばりぃ~♪」のところで、拳を握って、ほんとに歯を食いしばる。


 早川さんのコンセプトは――自由に!――ということで、あんまり注文はつけない。


 みんな自由に歌って、それが結果的に調和すればいい的に考えている。


「自由はいいけど、不協和音的なのは困ります」


「了解だ、同志早川!」


 ププ(* ´艸`)  みんな噴き出す。


 10円男は留年生で、前の年(1969年)がピークだった学園紛争を引きずってる。


 でも、どこか道化じみていて、それなりにクラスの居場所はあるようなないような(^_^;)。


「それで、他の四人は声ね。地味とか派手とかは個性でいいと思うんだけど、声が出てないと萎んで見える。声さえ出てればフリとか動きとか相応しいものが自然に出てくるわよ」


 なかなか本質をついている。


「「「「メグリ、がんばれ!」」」」


 前から声がかかる。


 言わずと知れたお仲間(真知子 たみ子 佳奈子 ロコ)ですよ。他にも五六人残って見てるしぃ。


 ほんとはね、動画撮って見直しとかできるといいんだけど、スマホ出すわけにもいかないしね。




 ウワアア(≧▽≦)




 なんだか隣の四組で盛り上がっている。クラスの何人かが――え、なになに!?――と様子を見に行く。




 ワハハハハハハ(≧艸≦*)




「ええ、なんなのよぉ?」


 早川さんが――もーなんなのよ!?――という感じで腰に手を当てる。


 タタタタ


 こういう時にタイミングを外さないのがロコ、駆け戻って来ると、目をへの字にして報告してくれる。


「す、すごいです! 花園先生がジュリエットやってます!」


 ええ!?




 隣りの4組は、舞台で『ロミオとジュリエット』をやることになっている。5組の合唱コンクール参加なんて霞んでしまうほどに前評判も良くて、我が担任の藤田先生も「おまえらも頑張れ!」と、慣れない檄を飛ばすほど。


 主演のロミオは、昔は児童劇団に入っていたという本格派の滝沢君で、もう一人の主役のジュリエットも学年で三本の指に入ろうかという美少女の栗原さん。


 ところが、その栗原さんが居なくて、彼女の衣装を花園先生が着て、台本片手に「おお、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの~(#・ω・#)♡」なんてやっている。


 元々小柄で大学出て二年目ということは、まだ二十代前半の花園先生は、テレまくっているということもあって、滅茶苦茶かわいい!


「本番も花園先生がやるのか?」


 10円男が、こっそり4組男子に聞くと、男子は「ああ、そうだ」と勝ち誇った顔で言うのだった。




☆彡 主な登場人物


時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生

時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート

辻本 たみ子            1年5組 副委員長

高峰 秀夫             1年5組 委員長

吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部

横田 真知子            1年5組 リベラル系女子

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

藤田 勲              1年5組の担任

先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組)

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