第17話『開けてビックリ!』

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記


017『開けてビックリ!』   





 ちょっと後ろ向いて。



 家に帰るなり、玄関先でお祖母ちゃんが「ただいま」を言う間もなく命じる。


「え、なんか憑いてんの!?」


 小学校の時、いつもとは違う道を通って帰ってくると、これをやられた。


 古いお屋敷が珍しくって、しばらく眺めて帰ったんだけど、その時にいけないものが憑りついたみたいで、そうやって祓ってくれた。


 バシーン!!


「イタイ(*◇*)!」


「よし、これでいい」


「なにが憑いてたの? メッチャ痛かったんですけど」


「憑き物じゃないわ、防御力を上げておいたの」


「防御力ぅ?」


「あの70年代はメグリと相性が良すぎる感じがしたんでね、ボーっとしてると、良からぬものと出くわす気がする。まあ、予防注射」


 良からぬものと言われて10円男の加藤高明の顔が浮かんだ。


 フルフルと首を振って自分の部屋に……張り紙がしてある。




――5時まで立ち入り禁止――




「バレサン焚いてるの、終わるまでリビングに居て、あと5分ほどだから」


「ああ……(-_-;)」


 バレサンは殺虫剤ではない、漢字で書くと『破霊散』、見た目も使い方も殺虫剤と同じだから、人が来ても怪しまれない。外出とかで着いてきた妖とかが、はびこらないための予防剤。


「やっぱり、なにか連れて帰っちゃった?」


「わたしもね、入学式でいろいろ拾ってきたみたいで」


「あ、あの若作り!?」


「ちょっと座んなさい」


「え、うん」


「高校生にもなったことだから言っておくけど、メグリの中にも魔法少女の血は流れてる」


「うん、あ、はい……」


「気軽に、あの70年代に飛び込んだけど、微妙に瘴気が高い。わたしの若作りはダテじゃないのよ。魔法少女の気を高めると若くなる。つまり、現役だったころのアビリティーを呼び覚ますと若くなるの」


「え、あれ、ディフエンスのためだったの!?」


「ディフエンスだけじゃなくオフェンスのためにもね。魔法少女が少女であるのは、つまりそういうこと」


「はい」


「メグリには、そういうこと教えてないから、もしもの時は、潜在能力をフル稼働させないとも限らないから」


「フル稼働すると、どう……なるの?」


「どんどん若くなる」


「魔法幼女とか(^▽^)!」


「幼女で済めばね」


「え……」


「強力な力は使えるけど、若くなりすぎて存在が消えてしまう」


「そうなの……」


「だから、常人としての防御力だけ上げておいたの。反射力とか打撃力とかの身体能力。あくまで、人間としての能力だから、基本は危ないところには行かない、近づかないこと」


「はい」


「まあ、お茶でも淹れよう、向こうで今川焼き買ってきたから」


「あ、一個20円!」


 初日に見つけて、まだ買ってないアレだ!(005『1970年のこんにちは』)


「それと……学校から書類とかもらってきてない、入学の前後っていろいろあるから」


「あ、そだ!」


 入学式でもらったあれこれ、部屋に置きっぱだ!


「あ、ちょ……」


「もう5分経ったでしょ……ウワ!」




 ドアを開けて後悔した。




 六畳の部屋には、妖や化け物の幼体、それがムクロになってゴロゴロ転がっていた。


 急いで窓を開ける。


 サッと四月の風とお日様の光が入って来て、ムクロたちは蒸発するように消えていった。


 こういうのは普通の人間には見えない。瞬間、自分の血を呪ってしまった。




 そして、四月九日。




 今日から本格的な高校生活が始まる!


 そう思ったら緊張して、朝礼前にトイレに行く。


 女子トイレは階段のすぐ横、で、入ってビックリ。


 ある意味、自分の部屋を開けてムクロたちに怖気を振るったよりもビビった!


 八つある個室のどこを開けても洋式が無い! 




 ぜんぶ和式なんですけど!


 


☆彡 主な登場人物


時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生

時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

宮田 博子             1年5組 クラスメート

加藤 高明             留年してる同級生

藤田 勲              1年5組の担任

須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館


 

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